Wednesday, June 4, 2025

近年、IR関連報告書に環境配慮型のオフセット印刷である「水なし印刷」を採用する企業が増えている。

近年、IR関連報告書に環境配慮型のオフセット印刷である「水なし印刷」を採用する企業が増えている。
業界に先駆けて、 1986年に水なし印刷を開始した久栄社は、2000年から環境配慮型印刷をアピールして積極的に新規需要を開拓してきた。
●水なし印刷で得られる多くのメリット「従来の水あり印刷よりクリアで美しい仕上がりを得られるのが、水なし印刷導入の要因でした」と同社代表取締役社長の田畠久義さんはいう。
当時は社会的にも印刷あるいは印刷物について、 環境は意識されていなかった。
ポスターや製品カタログ、 映画パンフレットなどのカラ ーオフセット印刷で評価を得てきた同社にとって、 品質向上は競争力を高めることにつながる。
「印刷工程でオペレーターが作業しやすいことも、 水なし印刷のメリットです」というのは、 営業第2事業部事業部長の桜井裕之さん。
水あり印刷では、 常に湿し水の調整が必要だが、 水なし印刷ではそうした煩雑さから解放される。
刷版の現像工程が異なる2ラインを持つのは効率が悪い。
水なし印刷機を入れた同社千葉工場は、1998年に印刷機 4 台すべてが水なし印刷機になった。
90年代後半、 大企業が環境経営ヘシフトする中で、 水なし平版を開発した東レは販売戦略において、 有害廃液ゼロを前面に押し出すようになる。
すでに米国では、 排水取り締まりの条例「事前処理基準」制定(78年)に対応するものとして、 92年にバージニア州環境改善局が水なし印刷を奨励したことから、 環境配慮型印刷としての位置づけができていた。
93年には、 印刷業者や機材メーカーによって水なし印刷協会(WPA)が設立され、 シンポルとしてバタフライマークが採用されている。
●国際市場で必至の印刷物グリ ー ン化久栄社は、 99年に大豆インキを採用、 2000年に営業本部内に環境推進室をたちあげ、 環境配慮型印刷の積極的なPR活動に乗り出した。
「国が上場企業に環境報告書の作成を求めるようになった時期で、 投資家向けの印刷物の環境配慮も進んでいたので、 こうした需要をターゲットにしました。
特にISOl4001認証を取得した大企業の反応はよかったです」と、 環境推進課課長の冨田立さんは当時を振り返る。
環境配慮型印刷へ取り組みでは「取り引きの長いリコ ーグループさんの存在も大きかった」と桜井さんはいう。
先進的な環境経営を進めてきた同グループの要望で、02年にはサカタインクスと共同で、 水なし印刷専用の100%植物油インキ (Non-VOCインキ)を開発した。
このインキは同グループの製品カタログ、 環境報告書などに使われている。
05年には、 審査の厳しいことで知られるリコーグループ化学物質管理システム(CMS)認証も取得した。
同グループをはじめ取引先企業の多くは「有害物質規制が強化されている欧州向けのCSR報告書や社内報といった印刷物に、特に神経をつかう」と冨田さんがいうように、国際市場での競争において、 印刷物のグリ ーン化は必至だ。
印刷物の環境配慮は印刷方法、 使用する紙、インキなどで表示される。
水なし印刷のWPAバタフライマークの ほか、 同社はソイシール(米国大豆油協会加盟により使用できる大豆油インキのロゴマー ク)、'FSC(森林管理協議会)認証マーク(CoC認証取得)などを、顧客の希望によって印刷物に入れている.水なし印刷を事業戦略の柱とする久栄社は、 印刷をベースとして、 情報メディアの企画から制作まですべてカバーできる体制を構築しつつある。
環境配慮型印刷は事業戦略の一つである以上に、 企業価値を高める役割を果たしている。

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