Friday, September 19, 2025

廃プラスチック六重の迷宮 ― 中国市場に揺れたリサイクル経済(1990年代末〜2000年代初頭)

廃プラスチック六重の迷宮 ― 中国市場に揺れたリサイクル経済(1990年代末〜2000年代初頭)

一九九〇年代末から二〇〇〇年代初頭にかけて、日本はバブル崩壊後の不況とデフレの中で循環型社会を掲げ、容器包装リサイクル法を中心とした制度を整備した。しかし国内での廃プラスチック処理は人件費や設備投資が高く、採算が取れなかった。これに対し急成長する中国市場は製造業の拡大とともに再生資源を強く求め、良質なフレークやペレットは日本国内価格の数倍で取引された。この価格差により、正規の委託ルートと輸出ルートが並存し、不正の温床が広がった。特に六重価格と呼ばれる構造が問題となり、分別費用、協会委託料、再商品化業者の受取額、輸出価格、国内市場価格、最終処分費用が重層的に絡み合い、差額を利用した利益操作が横行した。こうして真面目に制度を守る事業者が不利となり、不正業者
が利益を得る逆転現象が定着した。中国市場への依存は国内循環の構築を阻み、環境保護と経済合理性の間で制度は揺れ動いた。廃プラスチック問題は単なる廃棄物処理の課題にとどまらず、国際経済の波と国内制度設計の甘さを映す鏡となったのである。

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