紙の循環がつなぐ町の絆 ― 中野区「集団回収」全面移行の背景(2007年)
二〇〇〇年代半ば、日本の資源循環政策は転換期にあった。循環型社会の実現へ向け、国は住民団体による「集団回収」を積極支援する方針を示し、市民参加型リサイクルを後押ししていた。
東京都二十三区でも古紙は長らく行政回収と集団回収の二本立てだったが、中野区は二〇〇六年一〇月、翌年四月から全域で行政回収をやめ、集団回収に一本化すると表明。実際に二〇〇七年四月から全面移行し、年間でおよそ一億円の経費削減が見込まれた。
集団回収は、町会や自治会、PTAなどが新聞や雑誌、段ボールをまとめ、契約業者に引き渡す方式で、収益の一部は地域活動に還元された。効率的であり、住民の参加意識を高める効果も大きかった。導入初期から、抜き取りの減少や団体の認知度向上といった効果が確認され、リサイクルは生活の共同作業として根付いた。
当時は中国など海外需要で古紙価格が高騰し、資源価値の上昇が追い風となった。行政主導から住民主体への転換は画期的で、中野区のモデルは他自治体にも波及し、市民自治と環境政策を結びつける実践例となった。
現場では「子ども会が手伝ってくれた」「紙を集めることが町の力になる」といった声が響き、集団回収は経費節減を超え、地域と人をつなぐ物語を紡ぎ出した。
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