Tuesday, July 1, 2025

松山事業所:帝人ファイバーのユニフォーム再生 ― 2006年9月

松山事業所:帝人ファイバーのユニフォーム再生 ― 2006年9月

2000年代半ば、日本社会全体に「循環型社会」の理念が広がり始めていた。1999年に制定された「循環型社会形成推進基本法」を土台に、製造業や金融業を問わず、廃棄物の削減と資源の再活用が企業活動の一環として強く推奨されるようになった。とりわけ2006年は、京都議定書の目標達成に向けた国内施策が本格化した時期でもあり、多くの企業が「CSR(企業の社会的責任)」の名のもとに環境配慮型の取組を始めていた。

そのような時代背景の中で注目されたのが、帝人ファイバーのユニフォームリサイクル事業である。帝人ファイバーは、大阪に本社を置く合成繊維メーカーで、ポリエステル繊維の高度なリサイクル技術を持っていた。この技術を活かし、三菱東京UFJ銀行の旧制服、およそ5万着分を回収。これを愛媛県松山市にある自社の松山事業所で分解・再生し、再びポリエステル原料として蘇らせるという、先進的な取り組みを行った。

このプロジェクトは単なるリサイクルにとどまらず、企業間の連携、トレーサビリティの確保、そして循環型サプライチェーンの構築という点でも画期的だった。廃棄物を「資源」と捉える発想は、まさに当時求められていたサステナビリティ経営の実践そのものであり、地域経済への貢献という意味でも意義が大きかった。

特に松山事業所の役割は重要で、地元の雇用創出や技術の蓄積という面でも注目された。地域のインフラと高度技術を融合させたこのモデルは、その後の他業種によるリサイクル事業の先例ともなった。

この事例は、企業と企業、都市と地方が連携して循環型社会の実現に挑戦した具体例として、今なお評価されている。リサイクルの舞台裏には、時代の要請に応えようとする企業の知恵と努力が詰まっていた。

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