<オゾン層対策、遅々として進まない…>
食品会社やスーパーマーケット、飲食店の業務用冷蔵庫等の他、ビルの空調設備の冷却用触媒として使われているフロン(クロロフルオカーボン類:CFC類)回収が進まない。フロンは二酸化炭素に比べ数100~1万倍の温室効果ガスがあると言われている。国連・気候変動枠組み条約第24回締結国会議(COP24)で、地球温暖化の国際的枠組み「パリ協定」の実施指針にあたり、日本では再びフロン対策がクローズアップされている。
●フロンガスとは
1970年代半ば、人工的に作り出された物質フロンガスがオゾン層を破壊していることが究明された。オゾン層は地上20~30㎞の成層圏に存在する。太陽の日光に含まれいる紫外線をカットするカーテンのような役割を果たしている。この紫外線は、至って有害で、直接あたってしまうと、皮膚ガンや白内障・失明、免疫低下によるエイズなどのウィルス性の病気にかかりやすくなることがわかっている。さらには、生物細胞の遺伝子(DNA)にも影響がある。現在、世界中で皮膚ガンや白内障にかかる人が増加し、日本でも7倍に増えている。20年後には、オゾン層は2/3が減少。最悪の事態になると言われている。一方、オゾン層破壊は、地球温暖化においても、大きな環境問題のひとつだと指摘されている。オゾン層破壊の元凶であるフロンガスについては、かつてはエアコン、冷蔵庫、スプレーなどに使われ、大気中に大量に放出されていた。 フロンガスは地上付近では分解しにくい性質をもっているため、大気の流れによって成層圏にまで運ばれると、フロンは強い太陽紫外線を受けて分解し、塩素を発生。この塩素が触媒として働きオゾンを次々に破壊する。ちなみにオゾン層を破壊する物質には、フロンのほかにもいくつか存在。消火剤に使われている ハロンなどの物質が放出する臭素によってもオゾン層が破壊されている。
●フロンガスの国内外の取組みについて
フロンガスは、人体に著しい影響を与え、一方で温暖化による自然破壊に寄与している。どちらにしても果てしない欲望の産物として登場したものだが、そのフロンを放置したままって訳にはいかないのだ。1974年にフロンによるオゾン層破壊の可能性が指摘された後、日本を含め先進国は、生産能力の凍結や使用の段階的禁止などの処置をとりました。そして、国際的な議論が活発になり、80年代後半には、国際条約や議定書が定められ、多くの国が締約した。1953年「オゾン層保護のためのウィーン条約」(締結国172カ国とEU)、87年「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の締結。その後、規制物質の追加や規制スケジュール等の検討、改正が加えられた。国内では、フロンの回収・破壊に関しては、1990年代の後半には手引きやプログラムがつくられた。1988年5月オゾン層保護対策を進めるための法律として「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」が制定された。同法によって、日本におけるフロン類の生産量・消費量は削減されたが、これまでフロン類を使用していた機器が廃棄される場合のフロン類の回収・破壊については、地方自治体や業界の自主努力によって行われており、処理についての法的なシステムはなかった。このため、大部分のフロン類は、大気へ放出されていた。これを解決するため、制定されたのが、この法律である。98年公布の「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」では、家庭用冷蔵庫およびエアコンからの冷媒フロン回収を義務づけられた。2001年公布の「特定製品に係るフロン類の回収破壊、及び実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」では、業務用冷凍空調器とカーエアコンに使用されている冷媒フロンを大気中にみだりに放出することを禁止し、機器の廃棄時における冷媒フロンの回収と破壊を義務づけられた.その後時を経て2015年4月に「フロン排出抑制法」が施行されるも、遅々として進展ナシ。地球温暖化についても、他の温室効果ガスの排出量が減少する中、フロンガスだけは年々増加、その対策が課題になっていたのだ。
●フロン対策に係るビジネスチャンス拡大
高知工科大学の中根英昭教授(環境科学)は「罰則適用の強化だけでなく、温室効果の少ないフロンの開発や、代替物質の活用も重要だ」と。フロン罰則逃れではないけれど、各企業の代替品の開発については進展している。フロンとはまったく別の種類の物質を使った冷媒や発泡剤、洗浄剤の開発も進められいる。例えばアンモニアを冷媒とする大型業務用冷蔵庫は昔ながらのアンモニアの利用が考えられるが、アンモニアには毒性や可燃性があり、家庭用冷蔵庫への使用には問題があるので、代りにプロパンやブタンなどの炭化水素を冷媒とするものが研究開発されている。炭化水素。可燃性だが、家庭用冷蔵庫では充填量も少ないので、問題はないらしい。すでに欧州では炭化水素を使う家庭用冷蔵庫がかなり普及している。日本のメーカーも2002年から生産・販売を開始している。炭化水素のエアコンへの導入についても研究開発中だ。ドイツでは販売が開始されている。不燃性の二酸化炭素は理想的な冷媒だが、外気温が高い環境では冷媒作用がないと言う難点あり。しかしカーエアコンなどに利用しようという研究開発が進む。一方、冷媒を使わない冷凍システムも水素吸着合金の「水素を吸収すると熱を放出し、水素を放出すると熱を吸収する」という性質を活かしたMH冷凍システムもそのひとつの試みなのだ。また、電子素子をシステム化。「2種の金属の接合部に電気を流すと、一方の金属からもう一方の金属に熱が移動する」というペルチェ効果を利用したシステムで、静かなのでコンピュータのプロセッサの冷却や、ホテルや病院の小型冷蔵庫、ワイン専用の冷蔵庫などにすでに使われている。発泡剤については炭化水素や二酸化炭素、水への転換が一部実用化しているし、噴射剤については特殊な用途を除いて炭化水素(液化天然ガス:LPG)に転換されている。洗浄剤については水等が使用されている。環境負荷の改善をミッションとする環境ビジネスは「環境の世紀」21世紀にはニーズが高まるばかりなのだ。
No comments:
Post a Comment