密猟と希少動物の取引(1995年~2020年代)
#### 1990年代後半
1995年、東南アジア諸国では象牙やサイの角、ウミガメの甲羅が密猟の対象となり、日本や中国を含むアジア市場で違法に取引されていました。スマトラ島では、スマトラトラの個体数が激減し、400頭未満と推定されました。WWF(世界自然保護基金)は、国際的な取り締まりの重要性を訴え、シンガポールに監視センターを設立しました。CITES(絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約)の規制を強化する動きも進んでいました。
#### 2000年代
2000年代に入ると、密猟と希少動物取引はさらに拡大しました。特に中国やベトナムでは、伝統医療の需要によりサイの角やトラの骨が取引の中心となり、密輸量が急増しました。例えば、2004年には、南アフリカからベトナムへのサイの角の密輸量が前年比で2倍以上に増加しました。
一方、日本ではカワウソやトカゲといったエキゾチックペット需要が急増し、違法取引の温床となっていました。また、電子商取引の普及により、違法取引がオンラインで行われるようになり、取り締まりが困難化しました。2008年、中国と日本ではCITESの一時的措置として象牙の合法取引が認められましたが、この措置は後に批判を受け、2010年代に象牙取引の全面禁止につながりました。
この時期、国際的な協力も強化され、インターポールによる「オペレーション・コブラ」などの取り締まり活動が開始されました。これにより、東南アジアやアフリカ地域での密猟組織の摘発が進みましたが、違法取引は依然として高水準で推移しました。
#### 2010年代
2010年代には、象牙やサイの角取引に関する国際規制が強化され、取引量が減少しました。しかし、爬虫類や鳥類、サボテンや蘭などの植物が新たな違法取引の対象として注目されました。特にメキシコ産のサボテンや東南アジアの珍しい蘭が高値で取引される事例が増加しました。
また、中国は2017年に象牙取引の全面禁止を発表し、日本国内でも象牙の取引規制強化が求められるようになりました。一方で、エキゾチックペット需要が増加し、日本ではスローロリスや爬虫類の密輸が依然として問題視されていました。
#### 2020年代
2020年代に入ると、国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告によれば、2015年から2021年の間に約13万件の密輸押収が162カ国で記録され、4000種以上の動植物が違法取引の対象となりました。特に日本では、カワウソやスローロリスの違法輸入が続き、WWFジャパンはエキゾチックペット取引の危険性を指摘しています。
象牙やサイの角の取引は国際的な規制の成果として減少していますが、オンライン取引や仮想通貨を活用した新たな違法取引の形態が登場しました。特にコンゴ盆地やアジアのメコン流域では、地域経済の混乱を背景に密猟が続いており、生態系への影響が深刻です。
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