宮崎県都城市における焼酎蒸留かすリサイクルの歩み - 1997年9月
1997年、宮崎県都城市の霧島酒造と鹿島建設は、焼酎製造の副産物である焼酎蒸留かすを利用したメタン発酵システムを共同開発しました。この技術では、焼酎かすの70%をメタンガス、30%を堆肥に変換し、生成されたメタンガスは工場全体の熱エネルギー需要の約50%を賄いました。堆肥化された残留物は地元農業に利用され、農地の肥沃化を促進しました。この取り組みは、焼酎製造業界における廃棄物管理の新たな基準となり、2001年から予定されていた海洋投棄禁止にも対応するモデルケースとして注目を集めました。
2000年代の進展
2003年、霧島酒造は焼酎かすのメタン発酵処理プラントを稼働させましたが、当初は処理が安定せず、焼酎製造の一時停止も発生しました。鹿島建設とともに研究を重ねた結果、2006年に新たなプラントを導入し、1日約650トンの焼酎かすを安定的に処理できるようになりました。生成されたバイオガスは工場の燃料に利用され、年間約3000トンのCO₂削減に寄与しました。
2010年代の発展
2012年、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の開始を契機に、霧島酒造は余剰バイオガスを活用する発電設備を導入しました。2014年に「サツマイモ発電」を開始し、年間約700万kWh(約2000世帯分)の電力を生産。九州電力への売電を通じて年間約2億円の収益を得ることに成功しました。また、焼酎かすから抽出された堆肥は地域農業での利用が進み、農地の肥沃化に大きく貢献しています。
さらに、霧島酒造は製造プロセスの効率化と環境負荷低減に向けて、堆肥化装置やエネルギー回収システムの高度化を推進しました。これにより、工場全体で使用するエネルギーの大半を自家生成エネルギーでまかなう体制を構築しました。
2020年代の取り組み
2020年代には、全工場で1日約850トンの焼酎かすを処理し、約34000立方メートルのバイオガスを生成。この量は約22000世帯分のエネルギーに相当します。本社増設工場と志比田第二増設工場では、年間使用燃料の60%をバイオガスで賄い、年間約4500トンのCO₂削減を達成。生成されたバイオガスの一部は発電に利用され、電力を各家庭に供給しています。
2023年には、「霧島さつまいも種苗生産センター『イモテラス』」を稼働し、登録農家1200戸に健全な苗を供給。原料生産から廃棄物リサイクルまでを完結する「循環型企業」としての進化を遂げています。
総括
霧島酒造の取り組みは、焼酎製造における廃棄物の有効活用と環境負荷の低減を実現し、地域社会の持続可能性に大きく貢献しています。この歴史は、循環型社会への移行を目指す他企業にとっても模範となる先駆的な事例として広く評価されています。
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