黄海は、沿岸大都市の急速な都市化と人口増加により、2004年には世界で最も汚染が進んだ海域の一つとされていました。この時期、中国と韓国では、廃棄物の直接投棄や河川を通じた汚染物質の流入が続き、海洋生態系に大きな影響を及ぼしていました。特に漁業資源の減少や生物多様性の喪失が深刻化しており、「熱の島現象」による海水温の上昇も生態系バランスを大きく崩していました。この状況に対し、統合沿岸域管理(ICZM)の導入が進められ、地域社会や自治体による対策が始まりました。
2010年代に入ると、工業廃水や都市廃棄物の流入がさらに増加。中国では年間約4億トンの工業廃水が排出され、その一部が黄海に流入していました。韓国では、ソウルや仁川を中心とした産業廃棄物の不適切な処理が問題となり、沿岸部の汚染が一層深刻化しました。この間、漁業生産量も減少し、2015年の年間漁獲量700万トンから漸減していきました。一方、ICZMの導入が加速し、中国では地方自治体が漁業管理を強化。2019年には黄海における海洋保護区の面積が10万平方キロメートルに拡大しました。
2020年代では、黄海の環境問題が依然として解決に至らず、海洋汚染と生態系の破壊が進行中です。漁業生産量はさらに減少し、2022年には年間約600万トンに落ち込みました。生態系への影響としては、海水温の上昇が生物多様性に悪影響を与え、一部の魚介類が生息域を変える事態が発生しています。こうした状況を改善するため、中国では「長江デルタ環境保護プロジェクト」を展開し、年間1億トンの廃棄物削減を目指しています。韓国でも、SKイノベーションが「クリーンオーシャン」計画を進め、2021年には20億ウォンを投資しました。
統合沿岸域管理(ICZM)の枠組みの下、両国は国際的な協力を強化し、環境修復と持続可能な発展を目指した政策を推進しています。しかし、長期的な視野に立った取り組みが必要であり、技術革新や地域社会のさらなる意識向上が課題とされています。黄海の環境問題は、地域と国際社会の協力を通じた解決が求められる重要な課題です。
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