跡地利権騒動と都市の闇――1950年代初頭の歌舞伎町

跡地利権騒動と都市の闇――1950年代初頭の歌舞伎町

戦後日本の混乱がなお尾を引く1950年代初頭 東京・新宿の一角にある歌舞伎町では「跡地利権騒動」と呼ばれる都市の軋みが発生した。舞台は 米軍接収地として使用されていた防空壕跡地や映画館予定地。進駐軍撤退後に土地が宙に浮き 地元住民 不動産業者 暴力団が絡む利権抗争が勃発した。特に防空壕跡を巡っては町内会と勢力が衝突し 一時的に道路封鎖が行われるという異常事態に。高度経済成長の入り口に立つこの時代 土地は「空地＝金」と化し 奪い合いが激化。戦後の闇市の記憶を色濃く残す歌舞伎町では 資本と暴力が交錯し 都市開発の名のもとに住民の抵抗がかき消された。この事件は 歌舞伎町が歓楽街へと変貌する過程で生じた"都市の胎動"の象徴であり 現代の都市空間が持つ記憶と矛盾を物語る。