緑の購買者たちの対話―グリーンコンシューマー運動の10原則 2001年
2001年前後の日本社会では、「循環型社会形成推進基本法」や「グリーン購入法」が施行され、消費者行動そのものが環境政策の一端を担うようになっていた。とりわけ注目されたのが「グリーンコンシューマー」と呼ばれる人々である。彼らは環境負荷の少ない商品やサービスを選んで購入することを意識的に実践し、ライフスタイルの選択を通じて企業活動や市場全体に影響を及ぼそうとした。
当時の日本では、まだグリーンコンシューマーは数%にとどまり、ドイツのように国民の8割近くが環境配慮型の商品を優先的に購入する社会には遠く及ばなかった。それでも着実に支持層は広がり、10%を超える日も近いと予想されていた。背景には若い世代の環境意識の高まりや、市民運動との連携があり、消費者教育の遅れを補う新しい潮流として注目を集めた。
彼らの行動指針には、次のような10原則が掲げられていた。必要なものを必要な量だけ買う、使い捨てではなく長く使えるものを選ぶ、包装は無いか最小限のものを優先する、資源やエネルギー消費の少ない製品を選ぶ、化学物質による環境汚染や健康被害の少ない商品を選ぶ、自然や生物多様性を損なわないものを選ぶ、地産地消を意識する、生産者に公平な分配が保証されるものを支持する、リサイクルされた製品やシステムを活用する、そして環境情報を公開するメーカーや店舗を選ぶといった内容である。
この10原則をすべて満たすことは容易ではなく、現実には妥協も多かった。それでも一つひとつの選択が積み重なり、社会の価値観を変えていくと考えられた。環境に配慮した消費行動は、企業に対し「持続可能な商品をつくれ」という無言のメッセージとなり、結果として市場全体の方向性を変えていく。こうした動きは、消費者と企業の間の「静かな対話」とも呼べるものであり、開発優先から環境重視へと移行する時代精神の表れであった。
2001年の日本は、京都議定書採択後に温暖化対策を国内で具体化する課題に直面していた。環境意識はまだ十分に浸透していなかったが、グリーンコンシューマー運動はその萌芽を支え、消費行動から社会を変えようとする小さな革命として語り継がれていくのである。
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