毒の大地に咲いた悲劇―ラブキャナル事件 1970年代

毒の大地に咲いた悲劇―ラブキャナル事件 1970年代

ニューヨーク州ナイアガラフォールズのラブキャナル地区は、未完成の運河跡地に二万トンもの化学廃棄物が埋められたことから始まる。フッカー・ケミカル社は1940年代から1950年代にかけて産業廃棄物を処分し、粘土で覆ったと主張したが、その後この土地には学校や住宅が建設され、数十年後に住民を襲う災厄の舞台となった。1970年代に入ると大雨や地下水の浸透で毒物が地表に漏れ出し、庭や地下室に不気味な液体が染み出した。住民の間では流産や奇形児の誕生、皮膚疾患やがんが相次ぎ、生活は恐怖に覆われていった。1976年、ジャーナリストの告発により全米に衝撃が広がり、1978年には環境保護庁が深刻な汚染を確認。カーター大統領は非常事態を宣言し、住民は避難を余儀なくされた。補償を巡って政府、企業、住民の�
��立は裁判へと発展し、最終的にフッカー社は数億ドルの和解金を支払い、国は浄化作業に乗り出した。1980年にはスーパーファンド法が制定され、連邦政府主導の汚染地域浄化制度が整備された。この事件は公害の危険性と廃棄物処理の重要性を突きつけ、環境運動の転換点となった。