都市の闇に轟いた爆音 ― 三菱重工ビル爆破事件 1975年2月

都市の闇に轟いた爆音 ― 三菱重工ビル爆破事件 1975年2月

1974年8月30日、東京都千代田区丸の内で発生した三菱重工ビル爆破事件は、日本社会を震撼させた未曾有の都市型テロであった。過激派組織「東アジア反日武装戦線」によって仕掛けられた爆弾は、死者8名、負傷者376名という大惨事をもたらした。高度経済成長を象徴する大企業のビルが標的となり、戦後日本の繁栄に突きつけられた暴力の衝撃は深く刻まれた。

背景には、経済成長の陰で広がった公害問題や、三菱重工が担った防衛産業、さらにベトナム戦争をめぐる国際的緊張があった。重工業と資本の結節点を攻撃対象とした犯行は、単なる犯罪ではなく、時代への強烈な反逆のメッセージでもあった。

事件後、テレビや新聞は連日このニュースを大きく扱い、ワイドショーも芸能や健康の話題から一転し、爆破事件の追跡報道に切り替えた。都市の真ん中で誰もが被害者になり得る現実を示したこの事件は、人々の不安を増幅させ、日本が直面する新しい暴力の形を可視化した。

三菱重工爆破は、後に続く連続企業爆破事件の端緒ともなり、学生運動から派生した過激派の一部が武力闘争へと転じたことを象徴する出来事であった。高度成長の影、政治への不信、国際情勢の緊迫が交錯するなかで、この爆音は時代そのもののひずみを告げる警鐘であった。