Sunday, September 28, 2025

光文社労使紛争と刑事事件化の時代―1975年の労働運動の亀裂

光文社労使紛争と刑事事件化の時代―1975年の労働運動の亀裂

1975年の日本は高度経済成長の終焉と石油危機の影響で不況とインフレに苦しみ、労使関係は緊張を増していた。出版界でも労働条件悪化への反発が強まり、光文社では二年以上にわたる労使紛争が続いた。その過程で暴力団が労組を支配する事態が起こり、やがて警視庁公安二課と大塚署が介入し、光労組の福山委員長を含む幹部十三人を暴力行為や傷害の容疑で一斉に逮捕した。中労委での調停直前という時期に行われた逮捕は、司法が紛争解決の手段として動いたかのように映り、社内問題が刑事事件へ転化する象徴となった。市川元夫は逮捕を「異常」と批判し、話し合いでの解決を求めたが、清水徳三郎は迷惑を理由に逮捕を妥当とした。こうした分裂は労働運動内部の路線対立を示していた。光文社は戦後創業の総合出版�
�で『女性自身』など大衆誌を発行し文化的影響力も大きかったが、出版不況の中で労使対立が深刻化した。事件は全逓争議や三菱重工爆破事件とも時代背景を共有し、労働運動が治安問題と結びつけられやすい状況を浮き彫りにした。文化産業における刑事事件化は1970年代半ばの社会矛盾の象徴であり、日本の労働運動の正当性と限界を示す鏡となった。

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