Thursday, September 11, 2025

立山黒部アルペンルートでブナ立ち枯れ ― 1990年代の観光開発と環境負荷

立山黒部アルペンルートでブナ立ち枯れ ― 1990年代の観光開発と環境負荷

1990年代、日本の観光は大衆化が進み、立山黒部アルペンルートは黒部ダムと立山連峰を結ぶ人気観光地として注目を集めていた。しかしその背後で深刻な環境問題が進行していた。京都大学の調査によれば、ルート沿いのブナ林ではすでに4分の1が枯死し、今後15~20年で大半が失われる恐れが指摘された。原因の一つは観光バスやマイカーによる排ガスで、年間約3万台が走行し、大気汚染が樹木を弱らせていたとされる。加えて、地球温暖化の影響が高山域の植生に及び始めていたことも無視できない。当時の日本は都市部の公害やダイオキシン問題に対応を進めていたが、山岳観光地への対策は遅れていた。この事態は「エコツーリズム」や「自然と共生する観光」の理念を広める契機となり、立山黒部でもマイカー規制や低公害�
��の導入検討につながった。ブナの立ち枯れは景観や生態系の損失だけでなく、観光資源の持続可能性に直結する問題であり、持続可能な観光政策の必要性を社会に強く訴えかけた。

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