Tuesday, September 9, 2025

黒人狩りと抗争 ― 歌舞伎町に吹き荒れた異文化の衝突・1990年代

黒人狩りと抗争 ― 歌舞伎町に吹き荒れた異文化の衝突・1990年代

1990年代の歌舞伎町では、ヤクザによる「黒人狩り」と呼ばれる暴力事件が繰り返され、裏社会と外国人勢力の対立が表面化した。バブル崩壊後の不況で国内労働市場が停滞する一方、アフリカや中東出身の外国人が夜の街に流入し、客引きやナイトビジネス、薬物取引に従事した。これにより日本人ヤクザの縄張りが侵食され、治安は悪化。結果として暴力による排除が「秩序維持」と称され、街頭での衝突が常態化した。

外国人の一人は「食っていくために路上に立っただけだが、仲間が突然襲われ、警察は見て見ぬふりだった」と証言し、彼らが生存のために働く中で標的とされた実態を示した。対してヤクザは「外国人に荒らされれば面子が立たない。だから掃除した」と語り、縄張り維持を暴力で正当化した。両者の言葉は、生きるための必死さと組織の論理が真っ向からぶつかり合っていたことを物語る。

この「黒人狩り」は、多文化が交錯する都市に潜む摩擦の象徴であり、日本社会が移民や多文化共生という課題に直面し始めた証左でもあった。2003年の「浄化作戦」では外国人客引きの排除が試みられたが、その背景には国籍や人種をめぐる不安と偏見が横たわっていた。歌舞伎町はこの時代、欲望の街であると同時に、国際社会の縮図としての衝突の舞台となっていた。

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