香川県高松市 ― リサイクルプラザの開設・1995年6月
1990年代半ばの日本では、バブル崩壊後の経済停滞の中で、環境問題への取り組みが大きな社会的課題となっていました。とくに都市部では最終処分場の逼迫や焼却場建設をめぐる住民反対運動が相次ぎ、「ごみをどう減らすか」「資源をどう循環させるか」が全国共通のテーマとなっていました。1991年の「リサイクル法」(正式名称:再生資源の利用の促進に関する法律)の施行、そして1995年に「容器包装リサイクル法」が成立したことは、市民生活レベルに直接リサイクルの意識を浸透させる契機となりました。
この時期に香川県高松市が開設した「高松市リサイクルプラザ」は、単なるごみ処理施設ではなく、市民が循環型社会づくりを学び、体験できる拠点として構想されました。延べ床面積570㎡の施設には、古紙を使った紙漉き体験コーナー、再生製品の展示コーナー、啓発資料を揃えた学習スペースなどが整備され、子どもから大人まで楽しみながら「ごみ=資源」という意識を持てる工夫が凝らされました。
背景には、当時全国で進められた「ごみ減量5カ年計画」や「ごみゼロ運動」の流れがあり、高松市も地域レベルで市民参加型の循環型社会形成を実践しようとしていたことが分かります。施設は市民の交流拠点としての役割も果たし、地域イベントや学校教育と結びつきながら環境学習の場となりました。
このリサイクルプラザの開設は、処理・処分一辺倒だった廃棄物行政から、市民協働による循環型社会づくりへの転換を象徴する出来事でした。1995年という時代の転換点において、高松市の取り組みは地方都市から全国に広がる「市民参加型リサイクル社会」の先駆的事例であったといえます。
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