Wednesday, September 10, 2025

### 沖縄に国際サンゴ礁センター構想 ― 1997年の国際環境協力の潮流

### 沖縄に国際サンゴ礁センター構想 ― 1997年の国際環境協力の潮流

1990年代半ば、日本を含む世界の環境政策の焦点のひとつは「生物多様性の保全」と「地球規模での協力体制」でした。1992年のリオ地球サミットで「生物多様性条約」が採択されると、熱帯林やサンゴ礁といった脆弱な生態系が国際的に注目されるようになります。特にサンゴ礁は、気候変動や海洋汚染、観光開発による劣化が問題視され、国連大学や国際自然保護連合(IUCN)などを中心に「国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)」が動き出しました。

こうした潮流の中で浮上したのが「沖縄に国際サンゴ礁モニタリングセンターを設置する」という構想です。沖縄は東アジアにおける最大規模のサンゴ礁を有し、地理的にもアジア・太平洋の交差点に位置することから、調査・研究・情報交換の拠点として最適と考えられました。計画段階では海中公園センターに調査が委託され、国際的なネットワーク(GCRMN=Global Coral Reef Monitoring Network)の一環として機能させる意図が示されていました。

当時の背景には、1990年代に急速に拡大したエコツーリズムと、それに伴うサンゴ礁破壊への懸念があります。沖縄でも観光開発やダイビングブームによりサンゴが荒廃し、白化現象も顕著になり始めていました。1997年はエルニーニョ現象の影響で世界的なサンゴ白化が観測され、日本国内でもサンゴ保全の必要性が強調される時期でした。

このセンター構想は、国内の自然保護運動と国際的な環境外交を接続する試みとして意義がありました。国際会議の舞台で日本が積極的に「環境大国」として存在感を示そうとした時代性が色濃く表れています。沖縄の地域振興策とも結びつき、環境と経済の両立を目指す象徴的なプロジェクトと位置づけられたのです。

No comments:

Post a Comment