循環の炎から生まれる光 ― バイオマスのメタン発酵技術と日本の挑戦(1999年4月・日本)
1990年代後半、日本では食品廃棄物や農業残渣の処理が社会的課題となっていた。従来の焼却処理はダイオキシンや二酸化炭素排出が問題視され、持続可能な代替策が求められていた。その中で注目されたのがバイオマスのメタン発酵技術である。有機性廃棄物を嫌気性微生物で分解し、メタンガスを生成するこの仕組みは、廃棄物処理とエネルギー回収を同時に実現し、資源循環の象徴とされた。発生したガスは発電や熱利用に用いられ、残渣は肥料として農地に戻すことができた。
背景には一九九七年の京都議定書があり、日本は温室効果ガス削減義務を負った。二酸化炭素削減と再生可能エネルギー導入を同時に進められるこの技術は期待を集め、各地で実証プラントが建設された。北海道では畜産廃棄物、九州では焼酎かす、関東では都市ごみの有機分別と組み合わせた事例が試みられた。関連技術には微生物改良、発酵槽制御、ガス精製やコージェネレーション利用、残渣肥料化があり、農業とエネルギーを結びつける地域モデルが形成された。欧州の先進事例も導入を後押しし、やがて食品リサイクル法やバイオマス・ニッポン総合戦略に結実、日本の環境政策の基盤を築いた。
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