生分解性潤滑油の開発 ― 持続可能な産業を支える新素材の台頭（1999年・日本）

生分解性潤滑油の開発 ― 持続可能な産業を支える新素材の台頭（1999年・日本）

1990年代後半、日本では産業活動による環境負荷、とりわけ水質汚濁や土壌汚染への懸念が高まっていた。石油系潤滑油は使用後や漏出時に自然分解されにくく、生態系に悪影響を与えると指摘されていた。この問題に対応する形で開発されたのが植物油をベースとする生分解性潤滑油である。短期間で自然分解され、廃棄時の環境負荷を軽減できるため、特に水辺や農業機械など自然に接する場面で効果を発揮した。欧州で環境規制が強化され、日本もそれを受けて導入や規格化を進めた。

同時期に広がっていたISO14001取得の流れも普及を後押しした。企業は環境マネジメントの一環として生分解性潤滑油を採用し、環境対応を進めることで企業イメージ向上や取引先からの評価を得た。さらにグリーン調達やエコマーク制度とも結びつき、持続可能性を意識した製品戦略の一部となった。関連技術では植物油の酸化安定性を高める添加剤や合成エステル系潤滑油が開発され、性能面で石油系潤滑油に匹敵する水準に近づいた。こうした進展は、環境と経済の両立を図る具体例として産業界に新しい選択肢を提供した。