新型オレフィン系ブロック共重合体の開発 ― 2000年前後の背景
2000年前後の日本は、化学産業が国際競争と環境対応という二重の課題に直面していました。プラスチック製品は高度経済成長期以来、包装材や建材、自動車部品など多岐にわたり利用されていましたが、その廃棄物は増加の一途をたどり、1990年代後半には「容器包装リサイクル法」(1995年制定、97年施行)をはじめとするリサイクル関連法が整備されました。また、ダイオキシン汚染や焼却処理の問題が社会問題化し、「循環型社会形成推進基本法」(2000年)によって、資源循環と廃棄物削減が国策として打ち出されました。
こうした背景のもと、チッソ石油化学が開発した新型オレフィン系ブロック共重合体は、従来のプラスチックに比べて耐衝撃性・熱安定性・透明性に優れ、しかも塩素やベンゼン環を含まないため、焼却時の有害ガス発生が少なく、再資源化に適しているという特徴を持っていました。開発は北陸先端科学技術大学院教授の研究成果を基盤としており、産学連携による実用化の成功例でもありました。
当時、欧州では「RoHS指令」や「WEEE指令」の準備が進められており、有害物質削減やリサイクル重視の潮流が世界的に広がっていました。日本でも同様に、産業界は「高機能でありながら環境負荷を最小化する素材」への転換を迫られ、オレフィン系ブロック共重合体はその要請に応える新素材として注目されました。
つまり、この開発は単なる技術革新にとどまらず、資源循環型社会の構築に直結する「環境調和型素材」の萌芽を示すものであり、化学産業が環境時代へ舵を切る象徴的な事例だったのです。
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