繊維リサイクル市場の拡大課題―2001年10月
2001年前後、日本では循環型社会形成推進基本法が施行され、廃棄物削減と資源循環の推進が国策として掲げられていた。しかし、繊維業界はその多様で複雑な構造のため、リサイクルの進展が遅れていた。衣料品や繊維製品は綿やウール、ポリエステルなど多様な素材が混紡され、製品設計も複雑で、再資源化に適さないものが多かった。さらに、流通形態はファストファッションから高級ブランドまで幅広く、廃棄後の回収ルートや再利用の仕組みが分散しており、効率的なリサイクルシステムの構築が困難であった。その結果、日本国内で年間171万トンを超える繊維廃棄物が発生する一方で、再商品化率はわずか9.5%にとどまっていた。
対照的にドイツでは、NPOや教会団体が主体となり、路上回収や自主システムが整備され、62.8%という高い再資源化率を実現していた。欧州では古着のリユースや輸出が文化として定着し、繊維循環の基盤が社会的に整っていたのに対し、日本はリサイクルショップやフリーマーケットの増加が見られる段階にすぎず、消費者意識や制度整備に遅れが目立った。背景には衣料の低価格化による使い捨て文化、古着への衛生面の抵抗感、行政の制度的不備が存在していた。
当時の日本における最大の課題は、消費者の参加意識を高めつつ、安定した回収ルートと市場基盤を形成することだった。繊維メーカーや流通企業もリサイクルしやすい単一素材製品や循環設計を模索し始め、自治体やNPOとの連携による仕組み作りが進められた。これらの取り組みは後に、サステナブルファッションやファストファッション批判といった潮流の土台を築くことにつながっていった。
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