環境と不法のはざまで 廃プラスチック越境譚 2001年3月
2001年、日本は循環型社会を掲げ、容器包装リサイクル制度や家電リサイクル制度の施行、循環型社会形成推進基本法の始動など、制度の整備を進めていた。しかしその裏で、廃プラスチックの不法輸出が深刻な問題となっていた。国内での処理コストや最終処分場不足に直面した業者は、リサイクルを名目にアジア諸国へ廃棄物を送り出し、現地では焼却や投棄が繰り返された。素手での分別や低温焼却は有害物質を発生させ、人々の健康や生態系を脅かした。これは国際的に有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約にも抵触し、日本の信頼を損ねる行為であった。
背景にはバブル崩壊後の停滞とコスト削減圧力、さらに物流網の拡大があり、制度の隙間を突いた業者は環境負担を途上国に転嫁した。国内では分別努力が無にされる懸念や、制度不備への批判が高まり、NGOやメディアが警鐘を鳴らした。これを受けて政府は輸出規制の強化や審査の厳格化に動き、国内では選別精度の向上や処理設備の整備が進められることとなった。
2001年3月は、資源循環の理念と現実の矛盾が露呈した象徴的な時期であり、後の政策転換を導く契機となった。
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