東京湾干潟の環境破壊―消失した水辺と青潮の記憶 2001年

東京湾干潟の環境破壊―消失した水辺と青潮の記憶 2001年

2001年前後の東京湾では、干潟の約九割が高度経済成長期以降の埋立によって消失し、生態系の危機が表面化していた。かつて江戸前の漁場や渡り鳥の中継地として豊かだった干潟は、物流拠点や工業地帯へ姿を変えたが、その代償として湾の自浄作用や生物多様性が大きく損なわれた。谷津干潟や三番瀬といった一部がかろうじて残るのみで、東京湾の自然環境は大きな転換点を迎えていた。特に問題となったのが「青潮」である。夏から秋にかけて、掘削跡や航路に溜まった貧酸素水が強風で湧昇し、硫化水素を含んだ水が表層に現れると海面は青白く濁り、魚介類が大量死した。1994年の船橋沖では大規模な青潮が発生し、漁業に大きな被害を与えた。市民生活への悪臭被害も深刻で、干潟消失の負の影響が顕著に表れた。2001年に
は千葉県が三番瀬埋立計画を白紙撤回し、保全と再生を柱とする政策転換が進んだ。国や自治体、市民が協働する「再生型」環境政策の必要性が強調され、干潟を守ることが東京湾全体の環境回復に不可欠であると認識された。こうした流れは、造成から再生へと方向を変える象徴的な契機となり、21世紀初頭の環境政策を大きく動かした。