「東出雲・揖屋に芽吹く資源循環型農業の夢」―2002年前後の視点から
2002年前後の日本では、農業の持続性が大きな課題となっていた。食料自給率の低下に加え、高齢化や担い手不足が進み、農村の活力が失われつつあった。同時期には循環型社会形成推進基本法や各種リサイクル関連法が整備され、廃棄物を資源として活用する流れが社会に広がり、農業分野でも有機資源を活かした仕組みづくりが求められていた。
こうした背景の中、島根県東出雲町の中海干拓地揖屋地区では「有機資源循環型農業推進特区」が構想された。この特区は堆肥製造施設を設け、畜産ふん尿や食品廃棄物などを堆肥化し、地域の農地に還元する仕組みを制度的に後押しした。廃棄物処理法や肥料取締法といった規制を緩和し、廃棄物を有効資源に変換する道を開いた点が特徴であった。
揖屋地区は中海干拓地に新しく生まれた農地を抱えていたが、その経営安定と持続的活用には新たな工夫が不可欠だった。堆肥製造を核とした循環型農業のシステムは、農業の環境負荷を軽減しつつ、地産地消や地域資源の再利用を進める実践モデルとなった。
この試みは単なる農業技術の導入にとどまらず、環境政策と農村再生を結びつけた挑戦であり、2000年代初頭の循環型社会を体現する取り組みとして全国的にも注目されたのである。
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