Friday, September 12, 2025

川崎市 ― 工業都市から循環型社会へ ― 2002年の視座

川崎市 ― 工業都市から循環型社会へ ― 2002年の視座

2002年当時、川崎市は首都圏有数の大規模工業地帯を抱える都市として、産業廃棄物問題に直面していました。高度経済成長期以降、石油化学コンビナートや重化学工業が集積した川崎臨海部は、日本の経済発展を支える一方で、大気汚染や水質汚濁、廃棄物処理問題といった深刻な環境負荷を抱えてきました。1970年代には公害都市の象徴ともされた川崎ですが、2000年代に入ると環境再生を軸にした都市経営への転換を迫られていたのです。

背景には、2000年に施行された循環型社会形成推進基本法があります。この法律によって廃棄物の削減、リサイクル促進、不法投棄防止などが全国的に義務付けられ、自治体にも実効性ある対策が求められるようになりました。川崎市はその最前線に立ち、循環型社会の構築を市の基本方針に掲げました。具体的には、廃棄物削減とリサイクル推進を定めた条例の策定を準備し、さらに不法投棄の現状回復や環境整備を目的とした基金の設立も構想しました。

この基金は、不法投棄の除去費用や環境修復に充てられる仕組みを意図しており、産業界の責任を明確にしつつ、市民と行政が協力して環境再生に取り組む制度的枠組みでした。工業都市としての発展を支えてきた川崎にとって、それは経済と環境を両立させる試みであり、従来の「成長優先」から「持続可能性重視」への転換点でもありました。

こうした動きは、同時期に進められていた川崎エコタウン構想とも連動しており、廃棄物の資源化やリサイクル産業の育成を通じて、環境を新たな都市競争力とする戦略へとつながりました。川崎市の取り組みは、かつての公害都市が「環境先進都市」へと変貌していく過程を示す象徴的な事例だったのです。

No comments:

Post a Comment