「益田に灯る"バイオマス循環"の構想」―2002年前後の視点から
2002年前後、日本は京都議定書批准を控え、温室効果ガス削減と循環型社会の実現が大きな政策課題となっていた。再生可能エネルギーの導入拡大が模索されるなか、地方では人口減少や高齢化に伴う農林業の停滞、耕作放棄地の増加が深刻化し、地域資源をどう活かすかが重要な論点となっていた。
島根県益田市全域で構想された「廃棄物→生物資源活用特区」は、この課題に応える取り組みとして注目された。木質系廃材や林地残材、畜産ふん尿といった従来は処理負担とされてきたものを、エネルギーや肥料に転換し循環利用することを目的に、規制を緩和する仕組みである。廃棄物処理法や肥料取締法の特例を設け、燃料化や堆肥化の実証を柔軟に進めることが可能となった。
当時の益田市は過疎化と高齢化が進み、地域経済の持続性が問われていた。そこでバイオマス資源を活用することは、環境政策にとどまらず、農林畜産業を基盤とした地域産業の再生にもつながると期待された。木質バイオマスによる熱供給や畜産バイオマスのエネルギー変換は、地域のエネルギー自給率を高め、化石燃料依存を減らす可能性を秘めていた。
この特区は、廃棄物を「負担」から「資源」へと転換する象徴的な試みであり、全国的にも先駆的な挑戦として注目された。益田の事例は、地方からのエネルギー転換と循環型社会の実現を先取りする実験的なモデルとして位置づけられたのである。
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