東京都・杉並区 ― 都市型自治体の循環型社会モデル ― 2002年の視座
2002年当時、杉並区をはじめとする都市型自治体は、人口密集地ならではの廃棄物処理問題や不法投棄対策に直面していました。高度経済成長期以降、東京23区では大量消費と大量廃棄が常態化し、最終処分場の逼迫やダイオキシン問題が社会不安を招いていました。2000年には循環型社会形成推進基本法が施行され、自治体も具体的な行動計画や条例策定に取り組むことが求められ、杉並区はその先進的事例の一つとなりました。
杉並区が準備していたのは、リサイクル促進と地域ゼロエミッションを柱とする条例です。ゼロエミッションの発想は、廃棄物を可能な限り資源として循環させ、最終処分量をゼロに近づけるという理念であり、都市部の生活と産業活動に密接に関わるものでした。区は、廃棄物の削減とともに資源の効率利用を進める仕組みを整備し、区民の日常生活から企業活動までを包括的にカバーする方針を打ち出しました。
また、区は優良な産業廃棄物処理業者の育成を重視しました。当時、処理業者の中には不適切な対応や不法投棄に関与する事例が全国的に問題視されており、信頼できる処理技術と業者を育てることが、循環型社会実現の基盤になると考えられていたのです。さらに、都市型自治体にふさわしく、区民の生活環境を守りつつ都市経済の活力も損なわない施策を意識しており、環境と経済の両立を「首都圏モデル」として示そうとしました。
バブル崩壊後、国の公共投資頼みの政策から地方自治体の主体的な環境施策へと舵が切られる中で、杉並区の取り組みは「都市の持続可能性」を先取りする挑戦であり、東京23区の中でも注目度の高い政策展開だったといえます。
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