Saturday, September 20, 2025

バイオマス利用の世界的潮流 ― エネルギー転換の胎動 2003年

バイオマス利用の世界的潮流 ― エネルギー転換の胎動 2003年
2003年当時、世界は化石燃料依存からの脱却を模索し始めていた。地球温暖化防止京都議定書が採択され、2005年の発効を控える中で、再生可能エネルギーの導入は各国共通の課題であった。その中で注目されたのが、森林資源や農業副産物を活用したバイオマスエネルギーである。

EUでは政策的後押しを受け、バイオマス利用が急速に普及した。北欧諸国では木質燃料の利用が定着し、特にフィンランドでは2000年時点で市場規模が25億ユーロ、雇用は2万6千人に達するなど、バイオマス産業が地域経済の基盤を支えていた。森林資源が豊富な国情を活かし、国内需要の約25%をバイオマスで賄う体制が整えられ、欧州全体の再生可能エネルギー政策の柱とされた。また、ドイツやイギリスではメタン発酵によるバイオガスの利用が進み、酪農や畜産廃棄物を活用した分散型エネルギー供給が拡大していた。

米国でも木質発電がバイオマス発電全体の約6割を占め、地域の製材業や農業廃棄物と結びついた発電事業が進展した。さらにトウモロコシを原料としたエタノール燃料開発が盛んになり、エネルギー安全保障の観点からも国策として推進された。

一方、日本では化石燃料輸入依存が高く、バイオマス資源の活用は遅れていたが、2002年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が策定され、廃棄物や林地残材、食品廃棄物などを資源化する方針が打ち出された。地域ごとに未利用資源を活かすことで農林業の振興と温暖化対策を両立させる構想であり、循環型社会の形成に向けた実践的な一歩とされた。

この時期のバイオマス利用拡大は、エネルギー政策の分岐点として位置づけられ、以後の再生可能エネルギー推進の基盤を形づくったのである。

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