名古屋市(愛知県) ― 木質チップ需要増によるビジネスモデル構築 2003年
2003年前後、日本では循環型社会形成推進基本法の施行を受け、廃棄物の資源化が大きな政策課題となっていた。バブル崩壊後の解体ラッシュにより大量の木材廃棄物が発生する中、愛知県名古屋市のフルハシ工業株式会社は建築解体材や木材残渣を木質チップとして再生し、新たなビジネスモデルを確立した。この取り組みは都市型リサイクル事業の先駆けとされ、資源循環と経済性の両立を目指す象徴的事例となった。
木質チップの利用先は主に二つに分かれる。一つは製紙業界におけるパルプ原料で、輸入チップ依存を軽減し国内資源を活用する狙いがあった。もう一つはバイオマス発電燃料で、石炭火力との混焼や専焼ボイラーでの利用が進展し、再生可能エネルギー導入拡大の流れと合致した。2002年の京都議定書批准を背景に木質バイオマスの評価は高まり、国のエネルギー政策の中でも導入推進が打ち出された。
技術面では、大型チッパーやシュレッダーによる効率的破砕、比重・磁力を用いた異物除去、さらには流動床式ボイラーやガス化発電といった高度利用技術が並行して発展していた。また木質ペレット化の導入も始まり、小規模な熱利用や家庭用市場への展開が模索された。
名古屋市での事例は、廃棄物を再生資源へ転換し、製紙・エネルギー・建設と複数分野を結ぶ循環の拠点として機能した。これは都市圏における循環型経済モデルの具体化であり、日本のバイオマス利用拡大にとって重要な契機となった。
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