Monday, September 29, 2025

紙の循環がつなぐ町の絆 ― 中野区「集団回収」全面移行の背景(2007年)

紙の循環がつなぐ町の絆 ― 中野区「集団回収」全面移行の背景(2007年)

二〇〇〇年代半ば、日本では循環型社会形成推進基本法や容器包装リサイクル法の施行により、資源循環の仕組み強化が自治体に求められていた。財政難に直面する中で、中野区は二〇〇六年一〇月、翌二〇〇七年四月から古紙の行政回収を廃止し、町会や自治会による集団回収に一本化する方針を発表した。二十三区で初の試みであり、年間で約一億円の経費削減が見込まれた。

集団回収は、新聞や雑誌、段ボールなどを住民が地域単位でまとめ、資源回収業者に引き渡す方式である。売却収益の一部は町会や子ども会などの活動費に還元され、資源循環と地域活動が結びついた。導入後は抜き取り被害の減少、団体活動の活性化といった効果が表れ、単なる廃棄物処理から住民参加型の資源循環へと変わった。

当時、中国など海外需要の高まりで古紙価格が上昇していたことも追い風となり、回収の経済的メリットは大きかった。行政主導から住民主体への転換は画期的で、中野区モデルは他自治体に波及した。現場では「子ども会が一緒に集めた」「資源が町の力になる」といった声が聞かれ、政策は地域コミュニティの再生にもつながった。こうして中野区の集団回収全面移行は、経費節減と住民自治を同時に進めた象徴的な事例となった。

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