スノーデン事件とその時代背景（2013年）

スノーデン事件とその時代背景（2013年）

2013年に発覚したスノーデン事件は21世紀の国際秩序を揺るがす大事件であった。契約社員だったエドワード・スノーデンがNSAの機密文書約150万件を暴露し米国政府による大規模な通信傍受と監視体制が世界に知られることとなった。特にPRISMをはじめとする監視プログラムはグーグルやマイクロソフトなど大手IT企業を通じて個人の検索履歴や通信を収集していたことを示し米国市民のみならず外国首脳まで監視対象になっていた事実が国際社会に衝撃を与えた。ドイツ首相メルケルの携帯電話盗聴が発覚すると米独関係は冷え込み外交問題へ発展した。

背景には2001年の同時多発テロ以降の「テロとの戦い」がある。パトリオット法でNSAの権限は拡大しITの進展と結びついて監視網は日常生活の隅々まで広がった。だが2010年代初頭は「アラブの春」やSNSによる政治変動が相次ぎネットが自由の象徴とされる一方米国自身が巨大な監視国家であることが露呈した。結果米国内では市民のプライバシーと国家安全保障の均衡が問われ国外では「デジタル主権」が注目されEUを中心にデータ保護規制強化へと進んだ。

さらにこの事件は米国のソフトパワーを損ね中国やロシアは米国の偽善を批判し自国の厳格なネット規制を正当化する材料とした。スノーデン事件は単なる内部告発を超え情報秩序と国際関係の転換点となったのである。