ジブチにおける中国の拠点拡大(2019年) ― アフリカの要衝をめぐる地政学
2019年、中国が影響力を拡大した代表例の一つがアフリカ東端のジブチであった。ジブチは紅海の入り口にあたり、スエズ運河へ至る世界貿易の大動脈を押さえる戦略的要地である。そのため古くから列強の関心を集め、冷戦後もアメリカやフランス、日本が海賊対策や中東安全保障を目的に軍事拠点を置いてきた。こうした中、中国は2017年に初の海外軍事基地を設置し、国際社会に衝撃を与えた。その後も港湾や鉄道、データセンター、光ファイバー網などのインフラ投資を進め、2019年には経済・軍事・通信の各分野で存在感を大きく高めていた。これは「一帯一路」構想の一環として位置づけられ、アフリカにおける中国の戦略的拠点拡大を象徴するものであった。米中対立が激化する当時、アメリカはこの基地を「インド洋から
地中海まで続く海上覇権への挑戦」と受け止め警戒を強めた。フランスや日本も自国の活動空間が制約されることを懸念した。他方でジブチ政府は巨額の投資を歓迎し、経済的依存を深めた。こうしてジブチは、米国主導の安全保障秩序と中国主導の一帯一路が交錯する「大国間競争の縮図」として国際社会に映し出されることになった。
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