Saturday, September 20, 2025

ジブチにおける中国の拠点拡大(2019年) ― アフリカの要衝をめぐる地政学

ジブチにおける中国の拠点拡大(2019年) ― アフリカの要衝をめぐる地政学

2019年末、中国の活動が顕著に注目された場所の一つがアフリカ東端の小国ジブチでした。ジブチは紅海の入り口、バブ・エル・マンデブ海峡に位置し、スエズ運河へと通じる世界貿易の大動脈に直結する戦略的要地です。アジアと欧州を結ぶシーレーンの結節点にあたり、石油輸送や海上貿易にとって不可欠な地域であるため、古くから列強の関心を集めてきました。

冷戦期以降、アメリカやフランス、日本などが海賊対策や中東安保を目的に軍事拠点を構えてきましたが、2017年に中国が初の海外軍事基地をジブチに設置したことは国際社会に衝撃を与えました。その後も港湾インフラや通信網への投資を拡大し、2019年には港湾の拡張事業や鉄道敷設、さらにはデータセンターや光ファイバー網の整備を通じて存在感を一層強めていきました。これらは「一帯一路」構想の一環であり、アフリカにおける中国の影響力拡大戦略の象徴とみなされました。

当時の時代背景としては、米中対立の激化とアフリカにおける大国間競争が挙げられます。アメリカは中国の軍事基地設置を「インド洋から地中海に至る米国の海上覇権への挑戦」と受け止め、懸念を表明しました。フランスや日本もそれぞれ基地を持っており、中国の進出が自国の活動空間を狭めるのではないかと警戒しました。他方で、ジブチ政府にとっては中国からの投資は経済成長の生命線であり、巨額のインフラ資金提供を背景に中国への依存を強めていきました。

こうしたジブチの事例は、中国が単に経済支援にとどまらず、軍事・データ・港湾といった複合的なプレゼンスを築くことで、グローバルな戦略拠点を形成していることを示しています。つまり2019年当時、ジブチは「アメリカ主導の安全保障秩序」と「中国主導の一帯一路」の接点となり、大国間競争の縮図として国際社会に映し出されていたのです。

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