Thursday, September 11, 2025

小池都知事会見と「夜の街」レッテル化―2020年3月の社会背景

小池都知事会見と「夜の街」レッテル化―2020年3月の社会背景

2020年3月末、新型コロナの感染拡大が急速に進む中、小池都知事は会見で「バーやナイトクラブなど接待を伴う飲食業で感染が多発している」と発言した。この一言は、都民に危機感を与える狙いだったが、社会には「夜の街=感染源」というイメージが一気に広まる結果を招いた。報道やSNSは連日歌舞伎町を映し出し、街全体がスケープゴートとして扱われたのである。

しかし実態は単純ではなかった。風営法では接待を伴うキャバクラやホストクラブと、接待を禁じられたバーは区分されており、必ずしも感染リスクが同一ではない。それにもかかわらず一括して危険視されたことで、真面目に営業していたバーも加害者のように見なされ、現場には強い憤りが渦巻いた。

当時、社会には「三密回避」の意識が浸透し始め、欧米の感染爆発が大きく報じられていた。日本でも緊急事態宣言を控え、政治家の強い発信が求められていたが、その犠牲となったのが夜の歓楽街だった。SNSには「封鎖せよ」「水商売は不要」といった過激な声が飛び交い、生活を支える人々は差別と偏見の矢面に立たされた。

こうして2020年春、歌舞伎町は「夜の街」とひと括りにされることで深い傷を負い、行政への不信感と社会からの孤立を強めていったのである。

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