Wednesday, September 10, 2025

環境 森を守り、陽を呼び込む――高知県の森林環境税とメガソーラー 2023年

環境 森を守り、陽を呼び込む――高知県の森林環境税とメガソーラー 2023年

2003年に全国で初めて導入された高知県の森林環境税は、いまも県民一人あたり年500円の負担を基盤に継続されている。荒廃した人工林の間伐や植林、森林学習やボランティア活動の支援、さらには水源涵養機能の回復など、多様な取り組みを支える財源となってきた。令和5年度には第5期を迎え、国からの森林環境譲与税と合わせて約17億円が県と市町村に配分されている。税収の使途は基金を通じて透明化され、森林保全と県民参加を重んじる形で着実に事業が展開されている。高度成長期以降に失われた山の力を回復しようとする営みは、いまも高知の地域政策の柱となっている。

一方で、高知県は再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の導入にも積極的である。「こうち型地域還流再エネ事業」として、県・市町村・民間が共同出資し、得られた利益を地域に還元する仕組みを整えてきた。県有施設や住宅、事業所への太陽光導入を推進し、公用車の電動化を進めるなど、脱炭素社会に向けたアクションプランを段階的に展開している。その姿勢は未来に向けて「森を守りつつ陽を取り込む」取り組みと映る。

ただし、メガソーラー建設については一様に歓迎されているわけではない。土佐清水市などでは景観や土地利用への懸念が住民から示され、反対運動も起きている。高知県は再エネ導入を推進する一方で、無計画な乱開発を容認せず、地域合意と環境配慮を重んじる姿勢を示している。山林を守る税と、太陽光を呼び込む技術。その両者をどう調和させるかは、高知県が未来に託された課題であり、持続可能な社会づくりの試金石となっている。

森林環境税とメガソーラーは制度上は直接関係しない。前者は間伐や植林を支えて森林の公益的機能――水源涵養や災害防止、CO₂吸収――を守ることを目的とし、後者は化石燃料依存を減らすための再生可能エネルギー施策である。しかし、両者は土地利用をめぐって交錯する。森林を伐採して大規模なメガソーラーを設置すれば、森林環境税で守ろうとする公益機能を損ねかねない。他方で、耕作放棄地や荒廃林の跡地に環境配慮型の太陽光を導入すれば、森林再生とエネルギー確保が補完関係を築ける。高知県が進める再エネ政策は、この調和をいかに実現するかという挑戦でもある。守るべき森と活かすべき陽、その両者の折り合いをつけることが、地域の未来を形づくる鍵となっている。

No comments:

Post a Comment