Friday, September 19, 2025

2025年 塩ビリサイクルの行方 ― 2002年の数値目標50%を下回っている現状

2025年 塩ビリサイクルの行方 ― 2002年の数値目標50%を下回っている現状
2002年に塩ビ工業・環境協会が掲げた「リサイクル率50%」という目標は、循環型社会を象徴する数値として社会に広く受け止められた。塩化ビニル樹脂は建材や配管、床材、壁材などに幅広く利用され、その廃棄時に塩化水素やダイオキシンを発生させる懸念が強く、環境負荷低減と再資源化の両立が求められていた。当時は循環型社会形成推進基本法や建設リサイクル法が施行され、京都議定書の発効を控えて温室効果ガス削減も急務となっており、社会全体が廃棄物対策から資源循環へと舵を切りつつあった。

それから二十年余りを経た2025年の現状をみると、廃プラスチック全体の排出量は年間700万から800万トン規模で推移し、有効利用率は九割近くに達している。しかしその多くはサーマルリカバリー、すなわち焼却による熱回収であり、マテリアルリサイクルは全体の25%前後にとどまっている。塩ビ製品に限っても再生利用率は30%程度を超えるにとどまり、2002年に掲げられた数値目標50%には到達していない。

一方で、関連技術の進展は着実に進んでいる。2022年施行のプラスチック資源循環促進法の下で、建築用樹脂窓枠や床材の再生利用が試みられ、異物除去や鉛系安定剤の処理技術が開発された。さらに高炉メーカーと連携し、塩ビ廃材を還元材として活用するケミカルリサイクルも進展し、鉄鋼業とプラスチック産業を結ぶ産業間リサイクルが新たな展開を見せている。しかし、経済性や回収体制の地域差などの課題は依然として残っている。

2002年の数値目標から見れば、2025年の現状は未達成であることは明らかだが、二十年に及ぶ取り組みは確かな基盤を築いた。塩ビリサイクルはなお課題を抱えつつも、循環型社会の深化に向けた挑戦を続けているのである。

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