2025年 塩ビリサイクルの行方 ― 2002年の数値目標50%を下回っている現状
2002年、塩ビ工業・環境協会は使用済み塩化ビニル製品のリサイクル率を50%にまで引き上げる数値目標を掲げ、循環型社会形成の象徴的な試みとして注目された。塩ビは床材や壁材、配管などに幅広く利用され、その廃棄時に発生する塩化水素やダイオキシンが社会的懸念を呼んでいたため、再資源化と環境負荷低減の両立が不可欠とされた。当時は循環型社会形成推進基本法や建設リサイクル法が施行され、京都議定書の発効を前に資源循環と温室効果ガス削減が国際的課題となっていた。
それから二十年以上を経た2025年の現状をみると、廃プラスチックの排出量は年間700万から800万トン規模で推移し、有効利用率は九割近くに達している。しかしその多くはサーマルリカバリー、すなわち熱回収であり、マテリアルリサイクルは全体の25%前後にとどまる。塩ビ製品に関しても再生利用率は30%程度を超えるにすぎず、2002年に掲げられた50%という目標には到達していない。
一方で、関連技術や政策は進展している。2022年にはプラスチック資源循環促進法が施行され、建築用樹脂窓枠や床材の再生利用が進められた。異物や鉛系安定剤を除去する技術も確立されつつあり、さらに高炉メーカーと連携して塩ビ廃材を還元材に活用するケミカルリサイクルも試みられている。こうした技術革新は鉄鋼業とプラスチック産業を結ぶ産業間リサイクルの新たな可能性を示している。
2002年に描かれた数値目標は未達成であるが、この二十年の積み重ねは確かな基盤を築き、塩ビリサイクルは循環型社会の深化に向けた挑戦を続けている。
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