Monday, September 22, 2025

都市の火を灯す―現代のごみ発電(2025年)

都市の火を灯す―現代のごみ発電(2025年)

日本は世界でも有数のごみ発電大国として知られている。国土が狭く最終処分場の余地が限られているため、焼却処理の比率は早くから高まり、2020年代には一般廃棄物の八割以上が焼却され、そのうち七割が発電や熱利用に結びつけられるようになった。東京二十三区の清掃工場や大阪市の舞洲工場などでは、ごみ処理が単なる後始末にとどまらず、公共施設や地域の電力網を支える発電拠点へと姿を変え、余熱は温水プールや地域暖房に活かされている。

技術の進化も目覚ましい。従来の焼却炉は流動床炉へと進化し、安定した燃焼と高効率の発電を実現した。さらにガス化溶融炉では、ごみを高温でガス化・溶融し、副産物としてスラグを建材に再利用できるようになった。排ガス処理技術も進歩し、脱硝装置や高性能フィルターによりダイオキシンや窒素酸化物を大幅に抑制した。発電効率も向上し、一部施設ではコンバインドサイクルを導入し、二五パーセントから三〇パーセントの効率を達成している。

世界を見渡せば、欧州ではドイツやスウェーデン、デンマークがごみ発電を再生可能エネルギーの一部と位置づけ、地域熱供給と結びつけたシステムを築いている。アジアでもシンガポールや韓国、中国が大規模施設を次々と稼働させ、とりわけ中国は世界最大のごみ発電国へと歩みを速めている。

しかし課題も残されている。ごみの減量やリサイクル優先との整合、施設運営のコスト、そして燃焼に伴う二酸化炭素の排出は依然として問題である。これに対して、人工知能や情報技術を駆使した燃焼制御やカーボンキャプチャーの導入、バイオマスとの混焼による排出削減といった新たな試みが始まっている。

現代のごみ発電は、もはや廃棄物処理の副産物ではなく、都市の暮らしを支える不可欠なエネルギー源となった。効率と脱炭素を両立させながら、循環型社会の中核としてさらに進化を遂げようとしているのである。

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