Friday, September 19, 2025

塩ビリサイクル率50%へ ― 2003年当時の時代背景と展望

塩ビリサイクル率50%へ ― 2003年当時の時代背景と展望
2000年代初頭、日本では循環型社会への転換が急務となり、プラスチック廃棄物のリサイクルが大きな政策課題として浮上していた。特に塩化ビニル樹脂(PVC)は建材や配管、床材、壁材などに幅広く利用されていた一方、焼却時に発生する塩化水素やダイオキシンの懸念から社会的批判を受けやすく、環境負荷低減と再資源化の両立が強く求められていた。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、建設リサイクル法(2000年施行)や循環型社会形成推進基本法(2000年施行)が整備され、建設副産物や使用済み建材のリサイクルが制度的に後押しされた。また、京都議定書の採択(1997年)と2005年発効を控え、温室効果ガス削減と資源循環の推進は国際的にも不可避の流れとなっていた。

こうした背景のもと、塩ビ工業・環境協会は2003年、使用済み塩ビ製品のリサイクル率を50%にまで引き上げる方針を発表。床材や壁材といった建材を中心に回収ルートを整備し、都市開発や解体工事に伴う副産物の増加に対応する体制を整えた。加えて、高炉メーカーと連携し、回収された塩ビを高炉で還元材として利用する技術開発が進められた。これにより、鉄鋼業と塩ビ業界双方の資源循環を実現する「産業間リサイクル」のモデルが構築されていった。

2005年を目標に掲げたこの計画は、単なるリサイクル率の向上にとどまらず、産業界全体で循環型社会に向けた意識を共有する象徴的取り組みと位置づけられた。当時の政策潮流、そして廃棄物処理に対する社会的要請と重なり、塩ビリサイクルの強化は環境ビジネスの新たな展開として注目を集めた。

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