永遠の青春像 ―

永遠の青春像 ―
吉永小百合と昭和後期から平成への歩み（1960年代～2020年代）

吉永小百合は1960年代初頭、日活のニューフェイスとしてデビューし、瞬く間に国民的女優となった。高度経済成長期の日本で、彼女は純真さと知性を併せ持つ清新な存在として輝き、松原智恵子や和泉雅子といった同世代の女優と並び立ちながらも、比類なき透明感で観客を魅了し続けた。代表作『キューポラのある街』（1962年）では、鋳物工場の町で懸命に生きる少女を演じ、社会的現実を背負う存在として評価された。『伊豆の踊子』（1963年）では川端康成の原作世界を清らかに表現し、文学的な香りを漂わせた。また『愛と死をみつめて』（1964年）では難病の恋人を支える姿を演じ、スクリーンを超えて純愛の象徴となり、社会的反響を呼んだ。その後『動乱』（1980年）や『北の零年』（2005年）では重厚な歴史劇に挑み、国
家と個人、家族と時代のはざまで生きる女性像に深みを与えた。高峰秀子や岩下志麻といった同世代の女優がそれぞれ独自の芸風を築く中で、吉永は清純さを保ちながら成熟を重ね、稀有な存在として歩み続けた。山口百恵が「早すぎる引退」で伝説化したのに対し、吉永は引退せず、朗読活動や社会的発信を通じて「現在進行形の女優」として輝きを放っている。その人生と演技は、日本映画史において時代を映す鏡であり、観客の心に「永遠の青春像」を刻み続けている。