Sunday, September 21, 2025

■洗浄液や高周波焼入液、切削液、研磨液など、あらゆる製造業で使われる水溶性工業用加工液。

■洗浄液や高周波焼入液、切削液、研磨液など、あらゆる製造業で使われる水溶性工業用加工液。
これらの使用済み廃液量は全国で年間に約260万トンに及び、その処理が大きな課題として浮上してきた。
現在、廃液処理の主流は焼却処理だが、リンや塩素を含む廃液は焼却することでダイオキシン類を発生する恐れがあるのと同時に、各企業がゼロエミッションの取り組みなどを加速させているためだ。
株式会社ゼオテックは80年代初めに、水溶性廃液の再生技術を実用化し、装置製造・販売を手掛けてきた。
そして昨年には出張廃液リサイクルサービスを開始。
「製造からサービスへ」を合言葉に急成長しようとしている。
●コア技術は独自開発の荷電凝集濾過。
「02年12月にダイオキシン類対策特別措置法の暫定期間が終了するが、約7割の焼却炉が基準を満たすことができないといわれています。
設備投資の難しい業者では転業・廃業を余儀なくされ、行き場を失った廃液の処理費用は高騰するでしょう。
当社の廃液リサイクル技術の普及には追い風となります」とゼオテック代表取締役社長・井上雅仁さんはいう。
ゼオテックは石油販売からスタートしたが、オイルショックなどを機に、各種液体の性状分析事業を展開していた。
その過程で、不純物さえ取り除ければ廃液は再利用できることに着目。
70年代当時、工業用加工液がそれまで主流だった油性から水溶性へとシフトしている時期で、さらに水溶性廃液の再生技術もまだ確立していなかったことから開発に取り組み、8年の歳月をかけて完成させたものだ。
日本、EU、米国で特許も取得している。
■同社の水溶性廃液再生技術は、廃液に交流低電圧を荷与えさせることで、エマルション油分やSS(固形ごみ)分といった液中の不純物同士を凝集・粗大化させて、中空糸膜により濾過する「荷電凝集濾過方式」である。
この方式によって不純物を取り除いた水溶性廃液は、新品同様に再利用が可能になり、廃液処理費用と新液購入費用をともに削減できる。
とはいえ、リサイクル装置を商品化した当初は苦戦したという。
まだ企業の環境に対する意識が高まっておらず、さらにはバブル期で加工液をリサイクルして使おうと考える企業もほとんどなかったためだ。
しかし90年代に入り、トヨタ自動車など大手自動車メーカーからの引き合いを機に、一気に普及していった。
トヨタ自動車だけでも国内外の製造拠点で3500台が採用された。
自動車メーカーを中心に、これまでの導入実績は約5000台にのぼっている。
●処理ニーズの掘り起こしにサービス事業を発案水溶性工業用加工液はあらゆる製造業で使われているが、国内で廃液を再生利用している率はまだ1割にも達しておらず、充分な伸びる余地はまだ残されている。
反面、景気低迷で各社とも新たな設備投資は厳しい状況にある。
各企業で進められている環境経営の実践に加え、PRTR法、ダイオキシン類特別措置法、資源有効活用促進法など強い追い風が吹いているにもかかわらず、潜在する需要を掘り起こすのは難しい。
そこで発案したのが水溶性廃液再生処理の出張サービスだ。
景気回復を待望する「待ちの姿勢」を捨て、製造からサービスへの新たな業態変化を選択したといえよう。
「顧客が望んでいるものは何かを突き詰めていくと、『装置』ではなく『サービス』だという結論に行き着きました。
実際、導入までいたらないものの装置への引き合いは多く、水溶性廃液再生処理のニーズはひしひしと感じていました」と井上社長はいう。
発案した時点ではまだアイデア段階だった。
そこで、中小企業庁のベンチャー総合支援センターの援助を仰いだところ、専門家派遣認定企業に指定され、事業計画作成、マーケティング、資金調達の専門家を派遣してもらい、ビジネスプランを練り上げていった。
こうして外部の人材も活用しながら02年の1月、再生装置を搭載した車両で各工場に出向いて、水溶性廃液再生を行なう「モバイルリサイクルサービス」を開始した。
サービス開始に先駆けて自社で開発した「モバイルリサイクラー」と呼ばれる車両の処理能力はアルカリ洗浄液で1,000〜1,500リットル/時。
排出現場に3〜5トンの廃液貯留用のリースタンクを置き、いっぱいになった時点でモバイルリサイクラーが出向いて処理、再生液は再生タンクに貯留する仕組みだ。
処理価格は水溶性廃液の種類にもよるが、1リットル80円程度に設定した。
従来、水溶性廃液の焼却処理費用は40円程度だが、新液曝入費用削減分を考慮すると、サービス導入により全体で30%のコスト削減が見込めるという。
現在、トヨタ自動車などにサービスを提供、名古屋地区で8台を稼動させている。
●世界初となる水溶性廃液再生事業のフランチャイズ展開さらに同年7月からは直営だけでなくフランチャイズ展開も始めた。
水溶性廃液再生事業のフランチャイズ展開は世界でも初の試みで、ビジネスモデル特許も出願中だ。
「当初は1台、1台増やしていこうと考えたのですが、当社だけの力では限界がある。
また、各企業で取り組まれているゼロエミッションなどの計画を見ると2005年を目標にしているところが多く、その時点である程度までは全国をカバーしたいと考えフランチャイズ展開を選んだのです」フランチャイズ展開にあたり、装置販売で以前から取引のあった化学品大手商社の長瀬産業とも02年1月に資本提携を結んだ。
長瀬産業のサーバと結んだ通信管理システムも構築。
各車両に計測装置が搭載されており、処理量などのデータが自動的に本部の管理システムへと送られてくる仕組みだ。
加盟店は、収益から車両リース代などの諸経費を引いた分が利益になる。
加盟店の第一次募集には130社以上から引き合いがあり、25社程度との契約を予定している。
年明けにも第二次の加盟店募集を行なう計画だ。
また国内だけでなく、アジア地域における現地進出企業の廃液再生ニーズもあるとみており、国内同様にフランチャイズ展開を進める方針である。
韓国、中国、マレーシア、タイ、シンガポールにある長瀬産業の営業拠点にフランチャイズ本部を設置し、営業網を構築していく。
日本国内では最終的に、今後7年間で事業所の集中する神奈川、東京などに40台、そのほか各県に10台ずつの車両配備を計画している。
これは日本国内の廃液排出量260万トンのうち30万トンを処理できる体制で、市場規模は200億円を見込んでいる。
今年3月には朝日火災海上保険、イチネン、5月にはSMBCキャピタルから出資を受けて資本金を2億5000万円にまで増資。
「数年後には株式の店頭公開も予定している」(井上社長)。
製造からサービスへの発想転換が、同社に大きな飛躍への力をもたらそうとしている。

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