Tuesday, September 23, 2025

「増加する一方のFRP(繊維強化プラスチック)廃船」

「増加する一方のFRP(繊維強化プラスチック)廃船」
「不法投棄が増えて社会問題化しつつあり、本格的処理が急がれているなかで、処理装置の研究開発と実証試験が相次いでいる。」
三菱煎工はFRP漁船など、漁業系廃棄物を処理する実証試験プラントを(社)マリノフォーラム21から受注し、3月に新長崎漁港(長崎市)に据え付け、試運転を開始しました。これはFRP廃船の本格処理を目的に長崎市が同社団法人に実証を委託したもので、事業費は2億円。プラントの処理能力は1日0.5トンです。700度C前後の低温加熱(一般焼却炉は千数百度の高温処理)で樹脂だけをガス化し、ガラス繊維は溶かさずに残す仕組みです。焼却処理の際、有害タールやすす、悪臭などが発生せず、また溶けたガラス繊維の付着で炉を損傷することもありません。
三菱重工は1992年から広島研究所でガス化処理の実用化研究を始め、1994年11月には下関造船所に1日2トンの試験プラントを設置して研究開発を進め、すすや悪臭などの二次公害を出さずに処理することに成功しています。同社は今後FRP漁船やレジャーボートの他、浴槽、発泡スチロールなどの廃棄物処理装置として普及させていく考えです。
一方、下関市の異業種交流グループがFRP廃船を低公害、低コストで焼却処理するプラントを開発し、実証試験を3月に行いました。この装置の最大の特徴は、6.5mまでの船ならエンジンやスクリューなどの艤装を取り除く手間を省き、丸ごと焼却できることです。
焼却装置は長さ約7m、幅約2.3m、高さ約5.5m、重さ約16トン。船体を入れる一次燃焼室は直径約2m、長さ約6.5m。600度C前後の低温で燃焼させます。ここで発生した有毒ガスを二次、三次炉で完全燃焼させ、粉塵をサイクロンで除去して公害を抑制しています。燃焼残渣のガラス繊維は道路舗装などに再利用し、金属は専門業者に渡してリサイクルするなどの他、低温燃焼で燃料が節約できること、小型・軽量でかつ一次炉とその他の部分とを分割でき、10トン車でも移動できるなどのメリットがあります。このプラントの開発に当たったのは九州舶用工業会下関支部の異業種交流会FRP分科会のメンバーで、下関市に本社を置く中堅・中小の8社(東洋エス・イー:艤装品、岡本鉄工所:水密扉・マンホール、菊谷エンジニアリング:水産用省�
�機器、関西電業社:自動制御機器、船舶関連商社のシモセン、下関ディーゼル商会、博電社、ハマヤ商会)。中小企業事業団の委託事業として、山口県と下関市から補助金を受け、原材料費だけで約2650万円が投じられ、1993年10月から取り組んできました。同分科会は今後1台5千万円程度で販売に乗り出し、また当初からの目的の洋上焼却装置や自動制御システムの開発研究に引き続き取り組んでいきます。
「不法投棄船の4割占めるFRP」
30年ほど前から普及し始めたFRP製の船舶は、今や小型漁船やプレジャーボートと呼ばれるモーターボートやヨットなどがその主流となっています。現在プレジャーボートが30万隻、漁船が10数万隻あり、廃船だけでも3万隻以上あり、今後毎年1万隻以上増えると見込まれています。海上保安庁の調べによれば、1994年の全国の不法投棄船は1573隻、このうちFRP船は618隻で約40%を占めています。
4月1日から同庁は廃船の不法投棄取り締まりを強化するため、廃船指導票(オレンジカード)の貼付を全国的に開始しました。このシールを貼られた船の持ち主は、1カ月以内に適正処理を行わない場合、海上汚染及び海上災害防止に関する法律(海洋汚染防止法)違反で検挙されることもあります。1996年4月に環境管理・監査の国際規格「ISO14000」が発行されれば、船舶やその関連メーカーも環境管理の責任を厳しく追求されることは明らかです。
現在プレジャーボートは一般廃棄物、漁船は産業廃棄物に分類されていることから、漁業用FRP廃船の処理対策が急がれています。ちなみに漁業系廃棄物リサイクル事業でも、FRP漁船の廃船処理が検討課題となっています。

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