影の輪郭 サイバーとMITゲイダー研究が映す権利地図 2007年から2017年

影の輪郭 サイバーとMITゲイダー研究が映す権利地図 2007年から2017年

二〇〇七年から二〇一七年の時代背景では、実名のソーシャルネットワークが急拡大し、友人関係が半ば公共情報となった。二〇〇九年のMIT研究は、学内の友人構造だけから性的指向を推定し、単純な特徴量を用いた統計モデルで男性について実用的な精度を示した。本人が入力していない属性でも、同質性の高いつながりから露出する構造的プライバシー漏えいを可視化したのである。二〇一七年には顔画像による推定が登場し、人間を上回る精度が話題となる一方、データの偏りや外的妥当性、乱用可能性が強く批判された。二〇一三年当時、世界では同性愛を犯罪化する国が多数にのぼり、英連邦の多くで植民地期の刑法が残存、ジャマイカでは若者の殺害も報じられ、推定技術は実害と直結する脅威となった。近年は当事者支
援の対話訓練など、推定ではなく支援へ舵を切る試みも進む。技術は権利の地図を照らすが、同意、二次利用の制限、再識別の禁止、救済と説明責任が不可欠だ。