PRISM計画の暴露 ― 監視社会の実像とその時代背景
2013年、元NSA(米国家安全保障局)職員のエドワード・スノーデンは、米国政府が密かに行っていた大規模監視プログラムPRISMを内部告発した。PRISMはGoogle、Facebook、Microsoft、Appleといった大手IT企業を通じて利用者の電子メール、チャット、通話記録、クラウド上のファイルなどを収集し、諜報活動やテロ対策に活用していたことが明らかとなった。
当時の背景には常時接続社会の進展があった。2000年代後半からスマートフォンと高速通信の普及により、人々の生活はオンラインと切り離せなくなり、個人情報は膨大なデジタルデータとしてクラウドに蓄積されていた。米国同時多発テロ(2001年)の衝撃から安全保障優先の風潮が強まり、愛国者法(Patriot Act)に基づく監視拡大が正当化される流れも後押ししていた。
しかしPRISMの存在が暴露されると、国家安全保障と個人のプライバシー権の対立が世界的な議論を呼んだ。欧州では忘れられる権利やGDPRの制定へとつながり、日本でも個人情報保護法の改正が議論されるなど、法制度の強化が進んだ。
この事件は、常時接続社会において国家がいかに個人を監視できるかを白日の下にさらし、デジタル社会における自由と安全のバランスを根本から問い直す契機となった。スノーデン自身はロシアへ亡命を余儀なくされたが、彼の告発は今日に至るまでサイバーセキュリティと人権の議論の中心に位置している。
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