Monday, September 29, 2025

監視の網と信頼の崩壊 ― PRISM事件と企業の反発(2013年)

監視の網と信頼の崩壊 ― PRISM事件と企業の反発(2013年)

2013年エドワード・スノーデンによる暴露でNSAの監視プログラムPRISMの存在が明らかになった。PRISMはFISA法に基づき合法的に運用されグーグルやマイクロソフトなどのIT大手が政府要請に応じてデータを提供していた。しかし同時にNSAと英GCHQが企業の協力なしにデータセンター間通信を傍受する「MUSCULAR」計画を進めていたことも発覚しシリコンバレーは裏切られたと激しい反発を示した。社内では怒りと失望が広がりNSAを揶揄する象徴が共有されるなど政府との信頼関係は決定的に損なわれた。

当時は9.11以降の「テロとの戦い」で監視権限が急拡大しSNSやクラウドの普及によって膨大な個人情報が生成されていた時代である。監視実態が露呈すると米国の自由主義的イメージは傷つき国際社会は強く批判。EUは「デジタル主権」を掲げGDPRやデータ移転規制の議論が進んだ。さらに中国やロシアは米国の二重基準を批判し自国の厳格なネット統制を正当化する材料とした。

この事態を受け企業は透明性レポートを発行しデータセンター間通信の暗号化強化やプライバシー保護策を拡充した。またアップルやグーグルらは「Reform Government Surveillance」と題する公開書簡を発表し制度改革を求めた。こうした動きは2015年のUSA FREEDOM Act成立につながり監視とプライバシー国家安全保障と自由のバランスを世界規模で問い直す契機となった。

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