2013年3月11日月曜日

環境ビジネス市場構造の変化について

リベラルタイム3月号に掲載 
http://www.l-time.com/

大気、水質、土壌などの自然環境の保全、再生可能エネルギー(新エネルギー)の創出、エネルギーの省エネを含む高効率利用、資源・廃棄物の有効利用などに寄与する財(技術・製品)およびサービスの提供を目的とする環境ビジネスは、「環境の世紀」といわれる21世紀において、有望な成長産業として大いに期待されている。実際のところ、その成長性は、環境省の環境産業市場規模調査(2010年度)によると約69兆円に達し、それに伴う雇用規模は約185万人に及ぶ。一方、国際市場においても日本企業の保有する公害防止、省エネルギー技術などの環境技術は世界のトップランナーとして優位性を確保して海外に向けて輸出量を拡大している。そうした環境ビジネス市場は現在、第一次産業から第三次産業まで全産業に裾野を広げて、参入企業数は4000社を越え、創出された事業アイテムは約900.さらに2011年3.11の東日本大震災以降の災害廃棄物処理の他、原発に頼らない再生可能エネルギー、省エネ・節電、自家発電、蓄電などの市場が急拡大している。言ってみれば全員参加型の市場として形成されている。

東京ならではの環境ビジネス 環境ビジネスの市場は、二つに大別される。一つは各家庭から収集したゴミを焼却する施設、下水を浄化する処理場、防災関連などの官公需要で、もう一つは企業の事業活動で派生する廃棄物のリサイクル、消費電力の省エネ化などの環境負荷の改善、あるいは環境ビジネス創出に必要な装置・機器導入。そして一般消費者に向けた環境配慮した製品(環境グッツ)やサービスの提供係わる民間需要である。公共投資縮小で官公需要の低迷をよそに、現在の環境ビジネスの本流である企業・一般消費者の民間需要が今後とも右肩上がりで順調に推移すると思れる。民間需要で、ここ数年の特徴として各都市の一般消費者市場がじわりと伸びている。中でも人口約1300人を抱える東京の一般消費者の市場は顕著だ。その要因のひとつとして、特に3.11以降、特に東京の一般消費者の環境・資源・エネルギーへの配慮、将来世代への負担軽減、生命・健康についての関心度が他の地域と比べて比較的強いことなどが挙げられるだろう。その意識的な変化が消費行動に変化をもたらし、環境ビジネス市場の新たな創出につながっている。そうした新しいタイプの"緑の消費者”(グリーンコシューマ)をターゲットとした環境商品を扱う専門ショップの登場の他、西友、イオン、ユニーなど流通大手企業では独自の環境商品のプライベートブランド(PB)を立ち上げている。また通信販売各社では環境商品をラインナップに加え、カタログやインターネット販売での市場参入に積極的だ。「通販生活」は殊のほか環境改善に寄与する機能性や品質を重視。近年では省エネ効果の高い遮熱性のカーテン、有害物を除去する浄水器、無塩素の洗剤などが売れ筋のようだ。「千趣会」も環境商品を別途カテゴリー化している。食については、安全・安心のニーズの高まりから脱化学肥料・農薬の有機系農産物の生産者と消費者との見える関係での産地直送の流通形態が加速している。

●多様なビジネスが創出 その他、一般消費者市場でさらに拡大が見込めるのが、再生ビジネスだ。不要品を即廃棄したり、リサイクルに回す前に使用済み製品を再生させて再使用するというリユースを前提としたビジネスだ。古本、中古家電、古着、中古家具などのリユース、また古くなった住宅・部屋のリフォーム、故障した製品の修理・修繕、衣服の仕立て直しなど。市民相互のフリーマーケットやネットオークションなども拡大中だ。ネットオークションは年間1兆円市場に成長。中古小売も10年前に比べると2~3倍に増えている。さらに東京に限らず都市型ビジネスとして見逃せないのが自動車の個人所有から共同所有を目的としたカーシェアリングの定着だ。1台の自動車を複数の利用者で共同利用する仕組みで、レンタカーや駐車場事業者、不動産業者などの参入が相次ぎ、利用者は前年度比で2倍以上と急拡大。ビルやマンションなどの建築・建造物でいえば、国内の建設市場は新築市場から改修・補修市場へと転換期に入り、建物を長持ちさせるための改修・補修事業が大きなビジネス・チャンスになりつつある。改修・補修に併せて省エネ、耐震などの事業も伸びている。まだ実証段階だが、新・旧ビルを対象に情報技術(IT)を駆使してエネルギー需給を適正に管理・制御するスマートビルの試験も始まっている。一般家庭でのスマートハウスは大和ハウス、積水ハウスなどのハウスメーカーがすでに売り出している。

 ●環境ビジネス成功のポイント 環境ビジネスの参入事例で成功の確度がもっとも高いのがコア・コンピタンス(現業)の延長線上に環境ビジネスを創出すること。逆に失敗事例の多くは現業と脈絡のないところでの事業創出だ。本業の地続きのところで発想するのがポイント。例えば、食品加工メーカーなら、生産ラインで排出される廃棄物を原料とした飼料、サプリメントなどの製品化が無難だ。また事業・技術開発を自社単独で不可能な場合は企業連携を図るこ とも必要だ。東京・墨田区の中小企業10数社がチームを作り、それぞれの得意分野を活かして観光客向けのレンタル電気自動車を開発に成功している。多くの企業にとって、環境ビジネスは自社の有望な成長エンジンとしての可能性を秘め、なおかつ環境負荷の低減に寄与できる社会貢献型のビジネスに他ならないのである。