不法投棄が破壊する山林と水源――制度の隙間に落ちた自然(2000年12月)
1990年代後半、日本では産業廃棄物の不法投棄が急増していた。1999年度には全国で5709件の苦情が寄せられ、これは騒音や悪臭、大気汚染などの典型7公害を上回る割合となっていた。不法投棄の多くは山林や水源地に行われ、生態系への影響が深刻化していた。
背景には最終処分場の逼迫がある。残余年数は全国平均でわずか1.6年。処分場が確保できず、産廃業者は新規取引を避けたり、違法な処分に走ったりする傾向が強まっていた。現行の廃棄物処理法では、市町村には立地制限の権限もなく、水源近くへの投棄も制度上は防げなかった。
こうした状況に対し、2000年6月に改正廃棄物処理法が成立し、マニフェスト制度の強化や排出者責任の明確化が図られたものの、制度整備の遅れは各地での環境破壊を止めるには至っていなかった。水質汚濁、森林伐採、生物多様性の喪失といった影響が既に顕在化しており、「制度が整うまでに自然が壊れる」という声が住民から上がっていた。
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