Thursday, May 15, 2025

■ 液体浄化の唯一無二の技術。

■ 液体浄化の唯一無二の技術。
ISO14001認証取得サイトが6000を突破(2001年3月末現在)、現在でも月に200サイトのペースで認証取得が進み、その勢いはさらに拍車がかかっています。
こうしたISO14001認証取得サイトで必ず挙げられているのが排水・廃液の処理です。
法規制値の遵守はもちろんのこと、最近では各工場が極力排水を出さない「工場排水リサイクルシステム」を模索する方向にあります。
継続的な改善を迫られる認証取得サイトにおいて、排水処理の分野でステップアップするとすれば「排水リサイクルシステム」に行き着くでしょう。
リキッドコンサンド株式会社は、工場排水・廃液のリサイクルシステムを開発する先駆的なベンチャー企業です。
特に、クーラント液(研削液)のリサイクルシステムは、工作機械の加工コストを大幅に削減するとともに、廃液ゼロを実現できるということで注目を集めています。


● 工場排水リサイクルの技術的な課題。
事業開始の動機を岡上公彦社長はこう話します。
「以前から工場を見て思っていたのですが、廃水を処理せずに流してしまっている。
これを何とかしたいと思い17年ほど前に会社を設立しました。
当初は潤滑油の浄化を手掛けましたが、潤滑油は密閉容器・回路中にあり、いくらきれいに浄化しても目視では確認できず、正当な評価が得られませんでした。
そこで、外部から一目で液状態が確認できる工作機のクーラント液、洗浄液の浄化に開発を切り替えました。
それが86年のことです。
」工場廃水、洗浄液のほとんどは、それに混入している微粒子、バクテリア、エマルジョン化した油を除去すれば再利用、延命化が可能です。
しかし、これまで工場廃水をリサイクル使用するには技術的な課題がありました。
例えば、シリコン、セラミック、ガラスの研磨におけるクーラント液に混入する微粒子は0.4マイクロメートル以下です。
また、完全にエマルジョン化して洗浄液中に混入した油の粒径は0.51マイクロメートルと極めて微細です。
こうした1マイクロメートル以下の微粒子を除去しようとすると、1マイクロメートル以下のフィルタを使用せざるを得ません。
しかし、現状ではセラミックフィルタしかなく、それもすぐに目詰まりを起こすなど、とうてい使用に耐えられるものではありません。
そのため、大量の液体をセラミックフィルタの外表面に流し、その一部を浸透圧によりフィルタを通過させるなどの方法で対応しているのが現状です。
また、排水中の重金属イオン除去についてもこれまで、高分子凝集剤を使うか、キレート樹脂を用いるしか方法がありませんでした。
しかし、高分子凝集剤は、それを添加後、凝集沈澱に3040分を要し、沈澱層など膨大な設備面積を必要としました。
その上、高価な凝集剤の多量添加や沈殿物の処理など多大な費用がかかりました。
一方、キレート樹脂は、比較的設備が小型化できるものの、その再生処理時には多量の濃縮廃液が発生し、その処理に高分子凝集剤を必要とするなどの課題がありました。


● 吸着材で凝集、フィルタで捕捉。
こうした課題をクリアするべく開発したのが特殊な吸着剤を用いた凝集ろ過装置「SAフィルター」です。
開発から3年を費やし完成させたこの凝集ろ過装置と、油水分離装置とのさまざまな組み合わせにより、各種工場廃水のリサイクルシステムを提供しています。
SAフィルターの原理は簡単に言ってしまうと、独自開発した特殊吸着剤中に液体を通過させることにより、液体中の微粒子、バクテリア、エマルジョン化した油を互いに凝集させ、それぞれ約300倍の塊とし、目の粗いフィルタで捕捉するというものです。
すなわち、1マイクロメートルの微粒子は100マイクロメートルのフィルタで捕捉でき、またこれまで中空糸でしか捕捉できなかった0.1マイクロメートルの微粒子も10マイクロメートルのフィルタで捕捉できます。
一方、完全にエマルジョン化して液面にまった油も、吸着剤を通過すると、大きな塊となりますが、油は液体のため細長く変形してフィルタを通過します。
このためSAフィルタの後段に比重差の油水分離装置を設け、大きな塊となった油を液面に浮上させて回収する仕組みです。
このSAフィルタを導入することにより、工場廃液が10分の1以下、液の種類によってはゼロになるという報告もあります。
「当初は製品の良さは認めてくれるものの、納入までにテストが何年もかかるなど苦労しました。
ある工場に納入したところ、以前は廃液の臭いがくさいたてマスクや鼻栓をしながら作業していたのが、今では工場内で弁当を食べられる程になりました」(岡上社長)現在では、大手自動車メーカーの工場へも導入が決まり、米国シリコンバレーなど海外からの問い合わせもあります。


● リサイクルシステム導入でコスト削減。
同社の主力事業は今のところ、工作機のクーラント液のリサイクルシステムと排水中の重金属イオン除去システムの2本柱となっています。
工作機のクーラント液のリサイクルシステムでは、クーラント液の廃液をほぼゼロにするとともに、従来のクーラントタンク容量の5分の1程度に縮小できるシステムを開発しました。
また、住友電設と共同で各種工作機の個別対応システムや、手中管理システムの開発も現在進めています。
一方、排水中の重金属イオン除去システムでは、住友電設と共同で、SAフィルターを用いて小型で安価、かつランニングコストを低く抑えることのできるシステムを開発、展開しています。
高分子凝集剤を使わず、鉛、ニッケル、銅、六価クロムなどの重金属を除去できます。
その他、液晶ガラス基盤のダイジング液(水道水)をリサイクルできるシステムも開発し、注目を集めています。
これは24時間連続する洗浄作業のなかで、毎分160リットルのダイジング液を浄化しながら循環させるというものです。
97年9月に納入した処理能力200トン/日(受注金額1000万円)のものは、現在まで排水ゼロで連続運転を続けています。
SAフィルタの価格は標準機種のK350G50型(流量:水60リットル/分、油20リットル/分)で約230万円/台です。
0.1マイクロメートルの微粒子が除去できる中空糸、0.3マイクロメートルの微粒子が除去できるセラミックフィルタ、重金属イオンの除去ができる高分子凝集剤を用いる装置と同程度の処理能力を持ちながら、イニシャルコスト5分の1以下、ランニングコスト10分の1以下を狙って価格を設定しています。
環境保全対策は通常コスト要因と見られていますが、同社は廃液リサイクルシステムなどの導入により、逆にコスト削減できなければならないという方針です。
工作機のクーラント液リサイクルシステムであれば、液の再利用に加え、従来のクーラントタンク容量の5分の1程度にでき、工作機械をコンパクト化できます。
このため設置面積も大幅に削減できるメリットがあります。
また、トータル・プロダクト・マネジメント(TPM)の考え方から、工作機を初期の状態に保つことができ、長寿命化が図られる点もコストメリットになると考えています。
工作機(研削盤)の日本国内の生産台数は約6000台/年です。
日本国内では当面、新設工作機の10%、600台/年、最終的には60%、3600台/年を対象にSAフィルタを販売していきたいと考えています。
また、世界への展開も視野に入れています(世界の生産台数は約2万4000台/年)。
特許についても国際出願、ビジネス特許を含めすでに4件を取得しており、その他3件を特許出願中です。
営業マンが皆無で、大きな商談の場合には大手と組む必要があるなど、技術系のベンチャーにありがちな課題は同社にもあります。
世界への展開を考えると人・物・金の全ての面において足りないことは岡上社長も自覚しています。
しかし、世界を見渡しても唯一無二の技術であることは事実です。
液体浄化に関しては、大手トップ企業と比較しても技術的には負けていません。

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