### Facebookの記憶は消えない――五億人の情報が再び呼び出された春(2021年)
2021年4月、Facebook(現Meta)から5億3300万人以上の個人情報がハッカーフォーラムに無料で公開されるという事件が明るみに出た。氏名、電話番号、居住地、勤務先など、個人の輪郭をなす情報が、誰でも手に入る状態で再登場したのだ。
Facebookは「これは2019年に修正された古いデータ」と説明したが、時代はその言い訳を受け入れなかった。パンデミック下で人々がデジタル空間に生活の多くを預けていた2021年、情報の「古さ」は脆弱性の免罪符にはならなかった。
2018年のケンブリッジアナリティカ事件を経ても、データ管理の姿勢は変わらず、EUではGDPR違反の疑いからアイルランドの監督機関が調査に乗り出した。流出はもはや過去の事件ではなく、「一度晒された情報は永久に生き続ける」ことの証明となった。
Facebookは便利さの代償として、私たちの記憶すらも商品にしていたのかもしれない。あの春、五億人の情報が静かに告げたのは、「忘却の権利」などというものは、この世界には存在しないということだった。
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