環境の世紀と言われる21世紀に入り、経済・社会のあり方はもちろん、私たちの日々の暮らしのあり方についてもあらたな発想の転換が求められる。最近では衣・食・住の生活全般、あるいは人々の生き方そのものについて、旧来の「ファスト」から「スロー」という発想が広がりつつある。スローライフやスローフードの提案が消費者から出されている。特に食の安全・安心が問われる中で、スローフードが注目され、スローフードをコンセプトとした飲食店や、スローフードのレシピ付きの音楽CDの発売も話題となっている。マクドナルドに代表されるファーストフードの対極で、安全で良質な食材や食文化にこだわり、効率一辺倒の現代生活を見直そうという動きである
1998年にイタリアのブラ(Bra)という村からNPO活動として始まったファーストフード。①消滅の恐れがある伝統的な食材や料理、品質の良い食品、ワインを守る、②良質の食材を提供する小規模生産者を守る、③子供たちを含め消費者の味の教育を進める、というものだ。ファーストフード的な発想に支配された効率重視のファーストチェーンの反対命題だが、ファーストビジネスや画一化された大規模食品産業への単なる再考ではなく、「食」の本来の意義を問い直し、地域独自の食文化や食習慣、食事での人々の語らいや調理のあり方を再発見、再評価するという積極的な意味がある。現在45カ国に支部があり、約8万人あまりの会員がいる。
スローフードの動きの中には生産者と消費者との見える関係で新たな適正な流通チャンネルを通して、自然環境との調和をはかり、持続可能な生産と消費がはっきり見えてくる。食とは腹を満たし、栄養を確保するだけの「エサ」ではない。価格安が決め手のファーストフードのエサ的発想こそが、安全・安心、自然環境とは遠いものとなる。
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